| 物語るべきものを持った、期待の新人が描く新しい世界 |
第27回すばる文学賞の受賞作。83年生まれの作者が描く世界は痛みに溢れている。主人公ルイはスプリットタンに魅せられている。舌を切開して蛇のように二股にする身体改造の一種だ。知り合って恋人気取りでいるアルバイト男・アマの影響だ。
刺青にも興味がある。アマに連れて行かれた身体改造の店『Desire』でオーナー・シバと出会い、ルイはスプリットタンと刺青を試していくが、アマが街で起こしたケンカが、彼女の周囲に不吉な波紋を立てていき
…。
ストーリーテリングというより、精緻に描写されたディテールに酔いたい。興味のない人は、スプリットタンと聞いただけで思わず顔をしかめてしまうだろうが、読み進むうちに、「試してみよう」とする主人公の気持ちが分からないでもなくなってくる。
ここにあるのは「世の中への馴染めなさ」だ。自身の体を傷つけることで、「馴染めなさ」を世間に見せつけ、壊れそうな内面を守ろうとする。身体改造は精神を守るための鎧なのだ。
ダラダラとした絶望感と、懸命に世界を受け止めギリギリのところで生きようとする意志。性と暴力には辟易としている人も、是非一度目を通して頂きたい。これまでにない新しさがここにある。 |
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