本日、東京ロマンチカ
『本日、東京ロマンチカ
中野 翠 著
【毎日新聞社】
定価 1300円(税込)
発売中
ISBN:978-4-620-31844-8
   
出版社にリンク

この本を購入する
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
[WEB本の雑誌]TOPへ移動

映画、本、世の中を賑わす話題の数々。2006年11月から2007年11月までの約1年を斬る。「サンデー毎日」の人気連載が単行本になりました。
 毎年、今頃の季節になると中野翠の「サンデー毎日」連載が一冊の本になる。
『迷走熱』(1987年)『偽天国』(1988年)に始まって『犬がころんだ』『偽隠居どっきり日記』『クダラン』『無茶な人びと』『厭々日記』『へなへな日記』『くすだま日記』『ほぼ地獄。ほぼ天国。』『あんまりな』『まんざら』『ここに幸あり』『甘茶日記』『よろしく青空』。そして2007年12月『本日、東京ロマンチカ』である。
 なんと1987年から約20年連載されているということになる。その人気のほどがうかがえよう。本書は、2006年11月から2007年11月までの約1年分のエッセーを収録したものだ。
 タイトルは、ムード歌謡の「鶴岡雅義と東京ロマンチカ」からイメージしたもの。著者は、古き良き情緒のある月島に住んでいるが、2007年に「猛烈な再開発」の波が押し寄せた。変わりゆく「東京」について思いを寄せることが多かったから、だという。
 内容は、定評ある映画評論、書評の他に、世の中を賑わせた話題に極私的な話題も交えたエッセーだ。
 映画は、試写会、DVDレンタルまたは廉価版、ケーブルテレビにいたるまで。アカデミー賞授賞式批評から、私的年間ベストテンも披露。「趣味の押しつけ」とはいうものの、中野的ベストテンなら信頼できそうだ。新作映画もいち早く紹介しているが、アフリカの「金になる魚」がもたらした貧困を描いた『ダーウィンの悪夢』他のドキュメンタリー、下ネタ満載のコメディ『ボラット』といったマニアックな作品、市川雷蔵ほか古典的作品も紹介。映画ガイドとしても読める。
 芸能・社会では、辛口全開。「陣内智則と藤原紀香の十二単の結婚式」は、美人とお笑い芸人の意外性もすでに期限切れ、とばっさり。ポイントカード、電車の中で立って化粧をする女を斬ったかと思うと、沢尻エリカの無愛想事件については若い頃の自分を振り返り同情的だったり。『女性の品格』はなぜベストセラーになったかについて、じくじくと検証を加えているが、やっぱり180万部という数字の前で考え込む。流石の中野翠も弱気になる時があるのだ。
 岸田今日子、植木等が亡くなり、不二家、赤福、ミートホープなどの偽装問題、コムスンの不正発覚、渋谷の2件のバラバラ殺人事件、柳沢元厚労相の「産む機械」発言、ハンカチ王子、ハニカミ王子、バージニア工科大学銃乱射、赤ちゃんポスト、中越沖地震、柏崎原発停止、亀田ファミリー問題……
 振り返ってみるとこの1年間にいろいろな事件が、よくまああったものだと再確認させられる。もう1年たったんだ、という事件や話題と、1年で風化してしまったような話題。2007年という1年の世相アーカイブ的な要素も持っている。5年前、10年前の過去へ、中野翠の当時のエッセーで時間を遡って見るのも、面白いのではないだろうか。