人とロボットの秘密
『人とロボットの秘密
堀田 純司 著
【講談社】
定価 1470円(税込)
発売中
ISBN:978-4-06-214786-6
   
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ロボット工学は、「究極の人間理解」を目ざす!。
 最先端のロボット工学は、我々の想像よりはるかに進んでいて、エキサイティングな世界である。現在の課題は、人間のように「動作するだけ」から、さらに前進して「心」を持たせることを考えている。しかも、その可能性が見えてきつつあるという。
 日本のロボット工学のレベルは世界で突出している。産業用ロボットやセンサー技術の実用化が早くから進んでいたという背景もあり、研究者の数も多い。
 本書は、石黒浩(大阪大学)、中田亨(デジタルヒューマン研究センター)、前野隆司(慶應義塾大学)、高西淳夫(早稲田大学)ら、世界最先端のロボット工学の研究者に取材し、その研究成果を紹介する。まず認識しておきたいのは、人間と同じモノを作ろうとするなら、まず人間とは何かを深く知る必要があるということだ。なぜ、人間には意識があり、知能があるのか?
 著者のねらいは、最先端の技術者に取材しながら医学、脳科学、生理学、哲学でもない「ロボット工学が提起する人間観を伝えよう」とするところにある。
「人型機械を作るロボット工学は、実は究極の人間理解を目ざす学問分野」なのだ。

 ところで、人間の脳を機械で作り出す人工知能=AIの研究はどうなっているのだろうか? 1970〜80年代に話題となり、今やめざましい進化を遂げているのではないかと期待したのだが、どうも壁にぶち当たっているようだ。プログラムだけで、人間の思考を作ろうとしてもうまくいかないのである。
 すでに、人工知能やロボット工学の研究者たちは「心を実現するためには同時に体が必要である」ことに気がついている。つまり「心と身体は分けられない」と考え「体を持った知能ロボット」の開発が主流となっている。ロボット工学の研究者たちのあいだでは、肉体と精神を分けて考えるというデカルトの心身二元論が、あっさりと否定されているのだ。
 人間のような知能を作るには、赤ちゃんが大人になるように、体を動かし経験し学習させる中で、より複雑に知能を発達させるより方法はなさそうだという。このあたりの理由は、第4章に出てくる「受動意識仮説」のあたりを読むと得心がゆく。「私」を動かしているのは意識ではなく、体のそれぞれの細胞が反射的に機能している集合体である。意識とはこうしたプロセスの「後」に出てくるものであるという。「私」という意識は、実は行動を100%決定している主体ではないというのだ。
 この説が正しいかどうかは研究途上だが、ロボットづくりというのは、かなり人間くさい学問であることは実感できる。人工知能が可能だとすると、その姿は「2001年宇宙の旅」のHALのように頭脳だけでなく、アトムのように体も頭脳も持つ人間にきわめて近い形になるという。アトムの出現も全くに夢物語ではないのだ。