ミヤマ物語  [第一部]
『ミヤマ物語 [第一部]』
あさの あつこ 著
【毎日新聞社】
定価 1365円(税込)
発売中
ISBN:978-4- 620-10725-7
   
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ウンヌと雲濡村を結ぶ深い闇の正体とは?
「バッテリー」のあさのあつこが挑む、パラレル・ファンタジー。
 天才的なピッチャーとキャッチャーの活躍を描いた「バッテリー」で、幅広い読者の支持を得たあさのあつこ。本書も主人公こそ小学校6年の少年だが、ヤングアダルトという枠をまったく意識させない。しかもまったく新しいあさのあつこワールドが始まった。タイトルの「ミヤマ」とは「深い山」。現在も故郷の岡山県の山あいに住むというあさのあつこが、深い山のもつ闇の深さ、そこに感じる偶然を超えた何者かの存在を描く。
 時を超えた二つの世界が、この物語の舞台だ。現実の世界とウンヌというファンタジックな世界。ふたりの少年が出会い、二つの世界がシンクロする。
 一つは、少年ハギのすむ謎につつまれたウンヌという世界……それはお屋敷に住むミドさまが支配する身分差別のある不自由な村。掟によって村人はロウロウ、ニクル、クサジと身分が分けられる。最下層のクサジは、ミドさまを見ただけで「舌を抜き取られ、目を潰される」。村には結界が張られ、外に出ることは禁じられている。外界は魔界に通じていて、ヒトというマノモノが棲むからだという。しかし、村の掟を窮屈に感じ始めたクサジの少年ハギは、外界に憧れるようになる。
 そしてもう一つが現代。学校でイジメにあい、不登校を決意した小学校6年生の梅村透流。学校をサボってクスノキの大樹に登っていた時、「お前はウンヌに行くものだ」という声を聞く。幻聴かと思い、母に確認したところウンヌは父の故郷である雲濡村であろうという。母は義母の葬式に行ったことがあるが、なんと通夜の夜が明けると遺体が無くなっていたという。そしてとてつもなく深い闇をみたという。「ウンヌに行けば、自分が変われるんだ」という不思議な啓示に従い、雲濡村の父の実家に向かう透流。
 ウンヌのハギにとんでもない知らせが届く。母親トモがミドさまに粗相をしたとして、捕らえられ夜が明ける前に処刑されるというのだ。ハギは、村の掟を破って屋敷に救出に向かう。牢屋からトモを助け出し、ついにウンヌの外へ、自由を求めて逃走する。その時ハギと、現実の透流の世界がついにシンクロする……。
 「ミヤマ物語 」は、まだ第一部。ウンヌと雲濡村の関係、透流とハギの運命、ミドさまの正体は? 今後展開されるであろう、ハギと透流のファンタジックな世界が楽しみだ。
 深い森にいるようなひんやりとした冷気が感じられる不思議なこの作品は、きっと外界の猛暑を忘れさせてくれるだろう。