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    <title>横丁カフェ</title>
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    <updated>2009-01-08T01:55:10Z</updated>
    <subtitle>現役書店員が週替わりでおすすめ本のご紹介します。</subtitle>
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    <title>ピーター・ノースの祝福</title>
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    <published>2009-01-08T01:52:53Z</published>
    <updated>2009-01-08T01:55:10Z</updated>

    <summary>　本にカバーを掛ける派ですか？掛けない派...</summary>
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        <name>本の雑誌社</name>
        
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        <category term="<![CDATA[中原ブックランドTSUTAYA小杉店&nbsp;長江貴士]]>" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webdokusho.com/cafe/">
        <![CDATA[<p>　本にカバーを掛ける派ですか？掛けない派ですか？　僕はしないです。<br />　僕はあらゆる時間に本を読みます。ご飯を食べている時、電車に乗っている時、バイトの休憩中なんかはもちろん、歩きながらでさえ本を読みます。時々自転車にぶつかりそうになりますけど（笑）。僕の場合、「何かをしながら本を読む」ではなくて、「本を読みながら何かをする」なんですね。<br />　でも、人に何を読んでいるのか知られたくないと思ったことはありません。むしろ今読んでる本を宣伝したいような気持ちもあります。電車なんかでカバーを掛けて本を読んでる人がいると、何読んでるんだろうって気になりますよね。ああいう不健康な気分にもさせたくないですしね。<br />　汚れてもそんなに気にならないし、それにカバーをしたまま本棚に入れると、どこに何があるのかさっぱり分からなくなるしで、必要ないです。皆さんはどうでしょうか？<br />　とまあ何でカバーの話かというと、今回紹介する本は、ほとんどの人がカバーをしたくなるのではないか、と思ったからです。もちろん僕はしないで読みましたけど。<br />　表紙がなかなか凄いんです。ここの画像で分かりづらかったら、もう少し大きなものを探してみてください。ね、ちょっとカバーなしでは敬遠してしまうような絵でしょう？<br />　でもそこで引いてはいけません。何となくこみ上げてくる羞恥心を脇に置いて、レジへ向かってください。<br />　四編の短編が収録されています。すべて男性視点で描かれた恋愛小説ですが、恋愛小説と言い切ってしまっていいのかはわかりません。愛だの恋だのという以上に深い人間関係が描かれていると僕は感じました。「隣人愛」あるいは「人間愛」とでも言うべき関係を恋愛風にアレンジしたような印象でした。その二人の間にしか存在しない、まだ名前のついていない関係性で結ばれた男女のあり様が見事に描かれていて素晴らしい作品です。<br />　それぞれの主人公のキャラクターがまったく違っていて描き分けが見事で、それは女性の側も同じです。「うん」はアイドルの卵の大ファンとその子のことが好きな青年。「百年の梅干し」はちょっと変わった夫婦。「ピーター・ノースの祝福」は介護福祉士と超絶駄目ニートの青年。「虫の子　花の子」は新入生の女の子と小学四年生のデブの少年。こう書くとトーンがバラバラな話みたいだけど、全体としては非常にうまくまとまっていて、作品としての統一感もいいと思いました。<br />　一番好きなのは「百年の梅干し」です。ちょっと変わった夫婦の出会い、主人公の秘密、子どもや犬のこと、妻の母親のこと、梅干しを浸けることなんかを書いているだけなんですけど、いい話なんです。のほほんとしているのにどことなく力強い。変わっている人が大好きな僕としては、さつきという女性の造型も好みで、読んでいて面白かったです。<br />　「うん」だけはあんまり好きになれなかったけど、残りの三つは本当に素晴らしい出来だと思います。表紙の絵には躊躇するかもしれないけど、試練なんだと思って乗り越えてください。</p>
<p><br />&nbsp;</p>]]>
        
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    <title>踊るジョーカー　名探偵 音野順の事件簿</title>
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    <published>2008-12-25T00:42:37Z</published>
    <updated>2008-12-25T00:48:10Z</updated>

    <summary>盛岡を巣立った「新本格」の継承者、北山猛...</summary>
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        <name>本の雑誌社</name>
        
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        <category term="<![CDATA[東山堂&nbsp;外販セクション&nbsp;横矢浩司]]>" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webdokusho.com/cafe/">
        <![CDATA[盛岡を巣立った「新本格」の継承者、北山猛邦氏への手紙<br /><br />　はじめまして。盛岡の書店に勤務する愛読者（日は浅い方ですが......）でございます。<br />　盛岡を離れ、東京で迎える初めての（じゃなかったりして）年末年始、いかがお過ごしですか？　（帰省中だったりして）東京は、北山さんを変えていませんか？<br />　新作『踊るジョーカー』、早速拝読いたしました。というか連載中から読んでました。表題作にもなった第一回を読み、今までと明らかに違う北山作品（異世界ではない日常と地続きの舞台設定、シリーズキャラクター、コミカルなやりとりや会話の導入、等々）の登場に、「こういうの読みたかったんだよー」と狂喜し、思わず挟み込みのアンケートハガキに短い感想を書いて投函していました（「ミステリーズ！」Vol.25の最後のページ、〈読者の声〉に載った岩手県のＹは僕です）。<br />　あの時、「北山さんの新たな第一歩」と書きました。作品集として纏まったこの本を読み終え、改めてそれを確信したところです。北山さんらしさはそのままに、誰もが気楽に入っていける親しげな作品ですよね。北山さんを読み始めようとする新たな読者への、『アリス・ミラー城』とはまた別方向からの入り口が出来たと思います。サイン会も盛況だったようですね。嬉しいかぎりです。<br /><br />　北山さんが本格ミステリに嵌まりだしたのは、インタビュー等でのご発言から推察するに、98年の夏あたりでしょうか？　実は僕も、それまで文学一辺倒だった読書傾向が変わったのがその頃なのです。本格、新本格の傑作群を、次から次へ、熱に浮かされたように読みまくりました。一冊一冊、すべてが面白かった。あんな幸福な体験はそうそうありません。僕の読書人生の中でも、特別な夏でした。<br />　その後、職業柄いろんな本を読みまくるうちに、いつしか本格ミステリに触れる機会が減っていることに気付きつつも、その流れに抗おうとはしませんでした。が、しかし。昨年、本当に偶然、北山さんのブログ（リニューアル前のやつ）に辿り着き、盛岡在住（当時）の作家さんであることを知った僕は、一気に本格読者へと逆戻りです。そこからはもう、追っかけ（作品の、ですが）の日々。既刊の本はすべて揃え、「ファウスト」のバックナンバーを取り寄せ、対談や雑誌掲載の短編もフォローするようになりました。だって、全部面白いんだもん（古野まほろ氏や村崎友氏を読み出したのも北山さんのおかげ）。本格を読みまくっていたあの頃の情熱が、北山作品との出会いによって甦ってきたのです。他のジャンルと比べても、やっぱり本格の面白さは格別です！<br />　盟友・辻村深月さんが「自分と同い年の人で島田荘司先生のようなことを考えている人がいることが嬉しい」と言っていましたが、僕の場合「自分と同じ盛岡に住む人で新本格に影響を受けたプロの作家さんがいるのが嬉しい」という感じです。岩手にも多くのミステリ作家さんがいらっしゃいますが、その方たちとは違う、今どき珍しいくらいまっとうな物理トリックを中心にすえた本格ミステリを発表し続けている、たしかな作家的個性を持った方だと思います（地方メディアの方、もっと北山さんをとりあげて！）。<br /><br />　『石球城』も楽しみにしています。健康に注意しつつ、頑張ってくださいね。<br />　それでは、よいお年を......。 ]]>
        
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    <title>オリンピックの身代金</title>
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    <published>2008-12-18T02:27:10Z</published>
    <updated>2008-12-18T02:48:28Z</updated>

    <summary>　今年の漢字は「変」だそう。まあ、信じら...</summary>
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        <name>本の雑誌社</name>
        
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        <category term="<![CDATA[豊川堂カルミア店&nbsp;林毅]]>" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webdokusho.com/cafe/">
        <![CDATA[<p>　今年の漢字は「変」だそう。まあ、信じられないほど変なコトが多かった年なのかもしれないけれど、これは変えなきゃいけないって思った人が多かったってことだろうか。<br />　相次いで「今年いちばんの本」の発表がされたりすると、なんだか今年一年を振り返ってみたくなるのだけれど、一年も経つといろんなことがあるので、鳥頭な私には「あれ？　それって今年だったっけ」ってことも多い。北京オリンピックすら、ずいぶんと前の出来事のような気もしてしまう。</p>
<p>　奥田英朗の久々の大作『オリンピックの身代金』の舞台は東京オリンピック。昭和39年の話である。さすがに44年も前のこととなるとまったく記憶がないのだけれど（当時私はまだ一歳にもなっていないので、元々の記憶がないからかもしれません）、でも、なんだか懐かしさが漂う物語である。丁寧に描かれた社会の表情は、臨場感がたっぷり。<br />　<br />　アジアで初めてのオリンピック開催に沸き立つなか、新幹線が開通し、モノレールができ、武道館も建てられた。東京中が一気に近代化していくなか、国民に知らされないところで大事件が起きていた。<br />　警察幹部の邸宅がまず爆破されると「オリンピックを妨害する」という脅迫状が届く。オリンピックを人質に、その身代金が八千万円。犯人と思しき青年は、すぐに登場する。東大の大学院生である島崎は、秋田の貧村の出身。オリンピックの建設現場に出稼ぎに来ていた実兄が急死したことで、自ら飯場に住み込み、その底辺生活を知る。彼を通して、東京と地方、富裕層と貧困層の格差が浮き彫りにされる。繁栄に隠された現実。今も格差社会が叫ばれ『蟹工船』がヒットしたりしているけれど、（今以上に）過酷な格差のなかで皆もがいていたのである。それを疑問に思った彼は、現実を省みない国に挑戦していく。テロリストの彼はとても悪人には思えず、むしろ魅力的。その姿に感動したり、その境遇に共感や憤りを覚えたり。<br />　島崎と警察の男たち、彼の東大時代の同級生、近所の古本屋の娘と、立場の違う話者が替わりながら時間も前後しながら話は進んでいく。最終決戦のオリンピック開会式（10月10日ですね）。そこに向かってテロリストと警察との決死の攻防劇が繰り広げられていくのだけれど、事件の裏側が（同じ場面が二度、違う視点で語られることで）そのたび明かされていく構成は見事。<br />　テロ事件のわりには意外に始まりは静かな感じで、なかなか驚くような展開は見せないのだけれど、気がつくと物語に引き込まれ、頁を捲るのが止められなくなっていた。派手な仕掛けはないけれど、力の入ったサスペンスでありました。</p>
<p>　2009年のいちばん面白かった本が選ばれるのは、まだ一年先。（私が選ぶわけではないので、選ぶ方は）みなさん忘れないでね、覚えていてね（と言いたくなります）。<br />　こんなに面白かったら、さすがな鳥頭の私でも忘れませんから（たぶん）。</p>
<p>&nbsp;</p>]]>
        
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    <title>親から子へ伝えたい17の詩</title>
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    <published>2008-12-11T02:16:38Z</published>
    <updated>2008-12-18T02:47:26Z</updated>

    <summary>　一年の中で二番目にわくわくする日、それ...</summary>
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        <name>本の雑誌社</name>
        
    </author>
    
        <category term="<![CDATA[精文館書店中島新町店&nbsp;久田かおり]]>" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webdokusho.com/cafe/">
        <![CDATA[<p>　一年の中で二番目にわくわくする日、それはクリスマス。<br />　カソリック系の学校に通っていた４年間だけ、にわかエセクリスチャンだったけれど、本当は12月31日の11時59分までお寺で煩悩を除き、１月１日になった瞬間に神社へ移動してお神酒を頂く、典型的な日本人である。なのでその意味や背景とは全く関係なくイベントとして楽しんでいる。</p>
<p>　クリスマスと言えばサンタさん、サンタさんと言えばプレゼント。プレゼントと言えば貰うのもあげるのも嬉しいもの　だ。<br />　いや、そりゃまぁ貰う方が嬉しいかな。特にローマ字の付いたバッグとか、宝石キラキラのピアスとか、ウサギさんごめんなさいのマフラーとか...<br />　いやいや、そんな高価なものでなくとも例えば大好きなマシュマロやとろけるプリンや一口チョコであっても「プレゼント」と言って渡されたらそれだけで嬉しくなっちゃう。<br />　そう、プレゼントが嬉しいのは相手が自分のために選んでくれた物であるからなのだ。</p>
<p>　今この瞬間にも世界中の「サンタさん」がプレゼントをあれこれそれどれと選んだり悩んだりしているだろう。そんな「サンタさん」たちにオススメしたいのがこの本。<br />　ジョン・レノンからビートたけしまで、様々なヒトの「詩」が紹介されている。親から子へ、と言うテーマで選ばれた17編なのだけれど、子から親へでも、友から友へでも、彼から彼女へでもとにかく大切なヒトへ伝えたい言葉がみちみちと溢れているのだ。<br />　どの詩もしみじみと心に染みこんでくるのだけれど、生まれつきの病のため幼くしてこの世を去った山田康文君とお母さんの詩に強く胸を打たれる。「ごめんなさい」が「ありがとう」に変わる瞬間の美しいきらめきを全身で受け止めるべし。<br />　今回は聖夜特別号なので（嘘です、勝手に決めました、ごめんなさい）クリスマスに読みたい贈りたい本をＢＯＭ！と紹介しちゃうのだ。</p>
<p>『まどから、おくりもの』五味太郎／偕成社。とんちんかんなプレゼントを贈るサンタさんにドキドキはらはらするしかけ絵本。<br />『きよしこ』重松清／新潮社。うまく言葉が出ないきよし君のところへやってきた「きよしこ」が本当に大切なものは何かを教えてくれる。<br />『Presents』角田光代／双葉社。人生の様々な場面で贈られるプレゼント。それはモノではなくそこにこめられた心。<br />　そして最後は『羊男のクリスマス』村上春樹／講談社。村上小説でおなじみの羊男が呪いを解くために旅に出る。ほんのりしょっぱくてちょっぴり甘い、まるで塩キャラメルのような絵本なのだ。</p>
<p>　今年のクリスマスは世界中の子供たちが笑顔で過ごせますように！！！</p>
<p>&nbsp;</p>]]>
        
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    <title>円朝〈上〉</title>
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    <published>2008-12-04T01:30:53Z</published>
    <updated>2008-12-04T03:53:11Z</updated>

    <summary>　僕だけは買わないと思ってたんですよ。日...</summary>
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        <name>本の雑誌社</name>
        
    </author>
    
        <category term="<![CDATA[中原ブックランドTSUTAYA小杉店&nbsp;長江貴士]]>" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webdokusho.com/cafe/">
        <![CDATA[　僕だけは買わないと思ってたんですよ。日本中の誰もが買ったとしても、僕だけは、って。<br />　買ってしまいましたよ。デアゴスティーニから出ている「隔週刊　落語百選DVDコレクション」の創刊号。パートワーク誌にだけは手を出すまいと思っていたのに...。<br />　「赤めだか」が話題になり、酒飲み書店員大賞が「ファイティング寿限無」に決まり、今回紹介する「円朝」が河出文庫から復刊したり...。僕の中で落語が気になる時期だったんです（もちろん全部読みました）。そんな時にですよ、デアゴスティーニさん、「落語百選」なんか創刊しちゃいけないですよ。買っちゃうじゃないですか。まったくです！<br />　調子に乗って、立川談志の古典落語のDVDも買いましたよ。「子ほめ」と「粗忽長屋」を聞きましたけど、これが上手いのなんの！「子ほめ」は「落語百選」の創刊号のものと比較しましたが、やっぱりレベルが違いましたね。観客を自ずと惹きこんでいくその話術には驚かされました。落語を語る談志から、気迫の塊を感じました。<br />　「円朝」は、近代落語の祖と呼ばれる三遊亭円朝をモチーフにした小説です。著者の祖父が円朝の幼なじみだったこともあり、著者だからこそ書けた円朝一代記となっています。<br />　円朝の凄さは、名人上手が束になっても足元にも及ばなかったと言われるほどであり、寄席が掛かれば常に満員、客留めをしなくてはならないほどだったそうです。<br />　大した落語家ではなかった父に、幼い頃たった一度だけ上げてもらった高座が忘れられず、母の反対を押し切って落語家を目指した円朝。メキメキと力をつけて真打ちになるも、そのお披露目会で、その日の演目を師匠に先にされてしまう。それが幾日も続き困った円朝は、古典をやるから真似されるのだと気づき、新作をひっさげて高座に上がった。<br />　これが当たった。円朝は江戸中で人気を博し、円朝の看板が掛かれば客が押し寄せてくるまでになった。<br />　しかし円朝は悩む。鳴り物や背景に頼らず、余計な装飾のない素話一本で勝負すべきなのではないか、と。悩みぬいた末に素話のみに転向した円朝は、一気に人気を失って行く。しかし円朝は落語と真剣に向き合い、やがては当代随一と呼ばれる落語家へと成長していく。<br />　若くして天才と呼ばれ、多くの客を惹き込み、後々近代落語の祖と呼ばれるまでになった円朝も、しかし多くの悩みと対峙しながらの人生だったわけです。一方、落語一辺倒だったというわけでもなく、特に女性関係では様々に苦労することになります。ただ、芸人はどんなことでも芸の肥やしにするもので、女性とのゴタゴタさえも、最終的には落語に活かしてしまうようなところがありました。<br />　家族との関わりについても多く触れられています。母親、父親との関係や、また自分の息子に関する騒動なんかにもかなりページが割かれます。家族じゃないけど弟子との関わりもきちんと描かれていて、円朝の人柄が随所に表現されています。<br />　僕は本作がきっかけになって、落語に少しずつ興味が湧いてくるようになりました。落語に特に関心のない人でも楽しめる作品だと思います。]]>
        
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    <title>映画芸術　no.401 総力特集　相米慎二</title>
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    <published>2008-12-01T00:24:06Z</published>
    <updated>2008-12-01T03:04:39Z</updated>

    <summary>　今回は、今年生誕60周年、つい先日もＣ...</summary>
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        <name>本の雑誌社</name>
        
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        <category term="<![CDATA[東山堂&nbsp;外販セクション&nbsp;横矢浩司]]>" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webdokusho.com/cafe/">
        <![CDATA[　今回は、今年生誕60周年、つい先日もＣＳで特集放映のあった盛岡出身の映画監督、故・相米慎二氏の本を紹介します。２００２年刊行のバックナンバーですが、まだ入手可能のようです。ほぼすべて相米監督の記事で占められていますよ。<br /><br />　僕の相米体験の多くは、仙台の某大学に通っていた15年くらい前に集中しています。当時レンタルで観られたものはすべて制覇し、映画館でやるとなればいそいそと出掛けていき、作品をひとつ観終えるたびに、少しずつ世界が広がっていく気がしたものでした。「何を描くか」以上に「どう描くか」、僕がそんな描き方をしている小説を好んで読むのは、明らかに相米映画の影響だな、と思っています。<br /><br />　ひと月ほど前、相米慎二特集を掲げた「もりおか映画祭」が、監督の故郷、ここ盛岡で開催され、「セーラー服と機関銃」「魚影の群れ」「お引越し」「風花」の４作品が上映されました。もし単なる上映会だったら、参加しなかったかもしれません。全部観にいったのは、ゲストが盟友・榎戸耕史監督だったから。もっと言えば、榎戸監督が、今回とりあげた本を編集した方だったから、なのです（上映前トークでは、常にこの本を脇に抱えていらっしゃいました）。<br /><br />　この本には、相米作品に関わったスタッフ・キャスト（薬師丸ひろ子から浅野忠信まで）や、同時代を生きた監督、観客として作品に触れていた後の世代の映画人たち、などなど総勢99名の、追悼の言葉や監督との思い出が寄せられています。監督は、公の場やインタビュー等で、「思いを言葉で説明する」ということにあまり乗り気ではなかったようで、インタビューをまとめた単行本も一冊きりだったし（絶版だし）、そのことで海外での評価が遅れている、との言説まであります。だからこそ、編集者、執筆者の「思い」の結晶ともいうべきこの本の価値は、たいへん大きい。この中にはイメージ通りの監督もいるけれど、意外な一面も窺え（「壬生義士伝」をめぐる宮島プロデューサーの文章にしんみり）、読者は「市民ケーン」を観るように、あるいは「悪女について」（有吉佐和子）や「チワワちゃん」（岡崎京子）を読むように、様々な人の眼から見た「相米慎二」というひとりの人間に、少しずつ近づいていくことになります。いとも簡単にカタログ的な情報が手に入ってしまうこの時代、出版物が出来ることのひとつの形なのかな、とも思いました。相米ファンはもちろん、映画祭や、ＣＳで初めて作品に接した方も、ぜひぜひお買い求めを。<br /><br />　文学ファンとしては、構想を練っていたという「狂風記」（石川淳）と「富士」（武田泰淳）、やっぱり観てみたかったです。<br /><br />追記）あ、「お引越し」の原作（ひこ・田中著、講談社文庫）、復刊してる！ ]]>
        
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    <title>ばかもの</title>
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    <published>2008-11-20T01:51:43Z</published>
    <updated>2008-12-01T02:26:16Z</updated>

    <summary>　本屋にとって何が強敵かって、セロハンテ...</summary>
    <author>
        <name>本の雑誌社</name>
        
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        <category term="<![CDATA[豊川堂カルミア店&nbsp;林毅]]>" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webdokusho.com/cafe/">
        <![CDATA[<p>　本屋にとって何が強敵かって、セロハンテープほどしつこいヤツはいない。レジカウンターやワゴンの台車など、店内のいたるところにメモやポスターとともに生息していて、これがもうイヤになるくらい剥がれようとはしない。掃除のときに気になると研磨剤でゴシゴシするのだけれど、剥がれても「俺はここに居たんだぞ」と言うかのように、くっきりと残像が残る。スチールに塗装してある上だとテープとともに塗装も剥がれてしまったりする。時間が経てば経つほど、ヤツはさらに強固になっていたりして、まったく厄介極まりない。ならば貼らなきゃいいのだけれど、やっぱり都合がいいのでつい使ってしまう。自分でネタを作っておいて文句を言ってるようじゃ世話ないねけど。</p>
<p>　絲山秋子の新作『ばかもの』はアルコール依存症の男の話。そんなセロハンテープどころじゃないからね、そのしつこさったら。「酒を断つか、命を絶つか」までくると、読んでてとても苦しくなる。<br />　<br />　大学生のヒデにはアルバイト先で知り合った気の強い年上の彼女・額子がいたのだが、他の男と結婚することになったという彼女に公園の欅に括りつけられ、パンツをひざまで下ろされた状態でヒデは捨てられた。大学卒業した彼は、そのあと次第に酒に呑まれていくことになる。それでも中学教師の彼女ができ結婚を考える頃になるのだが、酒癖の悪さを指摘され、酔って恋人にあらぬことまで口走る。体が臭いといわれ呑み屋で喧嘩。会社でも昇進しない。友人も去っていった。父親からも出て行けといわれ婚約者宅に転がり込むが、そこでも彼女を殴ってしまう。しかし最悪なことに本人にはその記憶すらないのだから、たまらない。勤めていた家電量販店を辞めるが、退職金も酒に消えた。酒に依存すればするほど、彼の心も生活もどんどん荒んでいくばかり。（呑んでしばしば記憶をなくしたりすることもある私には、このあたりの描写はいや恐ろしい）<br />　婚約者も出て行ったあと、ようやく断酒を決意するも、うまくいかずフラフラしているところで額子の母と出会う。どこかで幸せに暮らしていたであろう彼女が、事故で左腕を失くしてしまったことを聞く。彼は断酒会に入り、ラーメン屋で働くようになり、ヒデは、同じくひとりになっていた額子の元へ向かうのである。</p>
<p>　冒頭の章で二人の気ままな日常が描かれ（二人のセックスシーンがほとんどだけれど）、そのときヒデは「額子って、（セックスの）終わったあとの方がかわいいよな」というと、彼女は「ばかもの」と返すシーンがあるのだが、10年に及ぶ苦しみのときを経て再会をしたあと「大人になるまで面倒見てやる」という額子に、今度は彼が「ばかもの」と返す。</p>
<p>「ばかもの」という言葉が、なんとも愛の言葉になっていて、じんときた。そのささやかな幸せにたどり着いた二人の姿が、とても美しい。</p>]]>
        
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    <title>有栖川有栖の鉄道ミステリー旅</title>
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    <published>2008-11-13T07:46:47Z</published>
    <updated>2008-12-01T03:13:57Z</updated>

    <summary>　断言する。　私は鉄子ではない。決してな...</summary>
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        <name>本の雑誌社</name>
        
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        <category term="<![CDATA[精文館書店中島新町店&nbsp;久田かおり]]>" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webdokusho.com/cafe/">
        <![CDATA[<p>　断言する。<br />　私は鉄子ではない。決してない。だいたい路線図も時刻表も読めない。<br />　なのに、この『有栖川有栖の鉄道ミステリー旅』を読んでいるうちに自分の鉄道にまつわる思い出がふつふつと湧き上がるのを止められなくなるのはなぜだ。そして誰かに聞かせたくなるのはなぜだ。<br />　仕方が無い、語ろう。久田的ヰタ・テツアリスを。</p>
<p>　子供の頃の夏の旅行は信州と決まっていた。父親が信州好きだったというのがその理由。最近は車での旅行ばかりになってしまったけど、あの頃はいつも鉄道での旅だったな。車内で食べる峠の釜飯、美味しかったなぁ。毎年持ち帰っていたあの器、どうなったんだろう...<br />　鉄道と言えばどこまでも続く線路。そう、昔は線路って自由に入り込めたんだよね。小学生の時、従姉妹と一緒にスタンドバイミーみたく線路の上を歩いていたら列車が来て必死で逃げたことがあった。けど迫り来る列車よりも怒った親のほうが怖かったな。</p>
<p>　夜行列車に乗ったこともある。仙台で行われる試合に参加して次の日の試験を受けるため夜行で帰ってきたんだけど。夜行の終着駅で名古屋行きの始発までの数時間をホームのベンチで寝て待ったんだよね。一応花の女子大生だったんだけど、私たち...</p>
<p>　鉄道にまつわる失敗ってのも少しあるな。<br />　毎日乗っている電車の乗り換えに失敗して今来た路線をまた戻ったり、行き先を確かめずに飛び乗ったら隣の県まで行ってしまったり、間違えて乗ったノンストップ特急を車掌さんに泣きついて止めてもらったり。少しじゃないか、結構あるか。<br />　乗りテツ有栖川氏はそういう失敗はしないのだろうか。しないよな、すみません。</p>
<p>　このエッセイの中で有栖川氏は実に楽しそうに旅をしている。<br />　乗りテツは鉄道に乗ることが目的だからひたすら終着駅まで乗って行って、そのまま戻って来るなんて旅を繰り返すのだ。これは究極の道楽なのかもしれない。ものすごい贅沢な時間の過ごし方なのだ、きっと。<br />　<br />　東にダムに沈む線路があると聞けば駆けつけてその車窓の全てを目に焼き付け、西に廃線になる路線があると聞けば終点まで行って深呼吸をする。そんなテツに私はなりたい...<br />　そうか、私は鉄子になりたかったのか。全く気付かなかった。では、手始めに地図を買おう。それから時刻表も買おう。まずは脳内路線でシュミレーションしてからだな。そしていつか立派な乗りテツ書店員としてデヴューしよう。ってどこにだよ。</p>
<p>&nbsp;</p>]]>
        
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    <title>ワープする宇宙　五次元宇宙の謎を解く</title>
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    <published>2008-10-30T09:13:28Z</published>
    <updated>2008-12-01T03:14:41Z</updated>

    <summary>　日本人３人に、ノーベル物理学賞（なんと...</summary>
    <author>
        <name>本の雑誌社</name>
        
    </author>
    
        <category term="<![CDATA[中原ブックランドTSUTAYA小杉店&nbsp;長江貴士]]>" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webdokusho.com/cafe/">
        <![CDATA[　日本人３人に、ノーベル物理学賞（なんとノーベル化学賞もでしたが）。これを書いている今ちょうどホットな話題ですが、この文章が載る頃には落ち着いているでしょうか。ノーベル賞と言えば６年前、小柴さんの物理学賞、田中さんの化学賞のダブル受賞も大いに話題になりました。<br />　三人の受賞は、素粒子論における「CP対称性」と関わっています。素粒子論というのは、微小な物質を対象にした物理学で、僕ら凡人にはイメージするのも難しい世界です。CP対称性についての説明は無理ですが、CP対称性の存在を提唱した南部さん、CP対称性が成り立つための条件を予言した小林さんと益川さんが受賞となりました。30年前の発表当時はあまりに独創的だったのですが、現在では素粒子論の基本となる「標準理論」の中核になっています。<br />　素粒子論と言えばもう一つ、ホットな話題がありました。スイスとフランスの国境にまたがって設置された「LHC（大型ハドロン衝突型加速器）」が、9/10ついに稼働したんですけど...、えっ、知りません？<br />　加速器というのは、素粒子を加速し衝突させる実験装置のことです。ビッグバンの状態を再現できるほどの出力で、実験によってブラックホールが出現し、地球が飲み込まれてしまうかもしれない、という危惧もあったようです。<br />　本作で著者は、このLHCによって自らの理論が正しいかがはっきりするだろう、と書いています。<br />　著者は、「ワープする余剰次元」という仮説で一躍注目を集めた女性物理学者です。この仮説については、紙幅（と僕の理解力）の都合によりここには書けませんが、僕らは実は５次元の宇宙に住んでいるとか、ブレーンと呼ばれる特殊な構造の上にいるとか、驚くような話が出てきます。またこの仮説により、素粒子論における階層性問題（重力は何故こんなに弱いのか）という難問が説明出来るようです。そんな仮説の正否がLHCによってはっきりするというので、今後の展開が楽しみです。<br />　ただ、その仮説のためだけに本作を紹介するのではありません。本作では、量子論や相対性理論から始まる、近年の現代物理学のこれまでの流れや成果について非常に分かりやすく書かれています。現代物理学というのは、僕ら凡人には何となく理解することさえ難しい領域に入っています。しかし、そんな高度に難しくなった物理学を、内容のレベルについては落とさず（実際本作の内容はかなり高度です）、一方で読みやすい文章と分かりやすい例を駆使することで、物理をあまり知らない人でもその世界を何となくイメージ出来るような内容に仕上がっています。これまで僕は物理に関する本を様々読んできましたけど、特定の分野だけでなく、広範囲に渡ってここまで分かりやすく書かれた本はなかったと思います。<br />　物理にちょっと興味があるけど、専門家の書いた本は難しそう、なんて思っている方にオススメです。内容は確かにかなり難しいので読み通すのは大変だと思いますが、それでもこれ一冊読めば現代物理学についてかなり分かった気になれると思います。<br />　<br /><br />]]>
        
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    <title>星のしるし</title>
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    <published>2008-10-23T01:57:48Z</published>
    <updated>2008-10-23T01:59:43Z</updated>

    <summary>　知り合ったばかりの人と会話をしていて、...</summary>
    <author>
        <name>本の雑誌社</name>
        
    </author>
    
        <category term="<![CDATA[東山堂&nbsp;外販セクション&nbsp;横矢浩司]]>" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webdokusho.com/cafe/">
        <![CDATA[　知り合ったばかりの人と会話をしていて、いまいち盛り上がらないなあと感じた時に、あせって自分の得意分野の話をして、ますます話がかみ合わないことに気づくって経験はないだろうか？　かといって当たり障りのない話では盛り下がるいっぽう。杉作Ｊ太郎氏によれば、そういうときに威力を発揮するのが「どっちにも転べる話」なのだそうな。例えば幽霊。相手が「信じる」「信じない」に関わらず、どっちにもあわせることができるのがこの手の話。けっこうその場がいい方向へいくようで、幽霊のほかにも宇宙人やUFO、UMAなども同じように使える。でも本当に信じている人たちには申し訳ないけれど、僕にとってそういう類の話は、話の潤滑油として上手く利用する、それ以上のものではない。むしろ聞き役にまわる方が面白い。その方がどんどんツッコミを入れられるので。<br /><br />　柴崎友香の新作を紹介するのに、なんで幽霊だのUFOだのの話をしているのだと思うかもしれないが、読めばわかるとおり、今回はそういった題材が効果的に使われた、こういう言い方が似合う方ではないが、野心作なのだ。<br /><br />　アパートのベランダの柵の上に立ち上がってお互いを指差したりする若い男女の不可解な行動を見つめる主人公の目線からはじまる本作。その印象的なオープニングに象徴されるように、いつになく不穏なキーワードが頻出する。祖父の死、霊安室、同僚との会話中の「殺す」という台詞、感情の抑制がきかない母親、勤め先の不安な先行き、借金したまま失踪する人物、そして得体のしれない生き物、などなど。仲間同士の楽しい空気感は残しつつも、全体的には艶消しのような、翳りのある色調。柴崎作品に、読み心地の良さ、フワッとした軽やかさを求める人たちは、意外に思うかもしれない。でも「自分の目の前にある世界が、そのままで面白い」の「面白い」が内包するものは、"楽しい"だけではない。この小説が読者に与えるものは、決してネガティブな気分ではないのだ。<br /><br />　本作をざっくり言うと「３０歳手前の女性の迷いや不安感を描いた小説」なのだが、柴崎さんの手にかかるとこうもオリジナルなものになるのかと、今さらながら感じ入ってしまった。粗筋を簡単にまとめた時に、そこからこぼれ落ちるものが多いほど、いい小説だと僕は思っているのだが、『星のしるし』の場合、その「こぼれ落ち方」が半端ではない。<br /><br />　好きでずっと見続けてきた監督の新作映画が、思っていたものとやや違う作風になっていて、でもその変わり方が予想外ではあったけれど嫌ではなくて、自分でも意外なほど楽しめた時の感覚を思い出した。心のどこかで、こういう作品を待っていたのかもしれない。今回の、微妙だが確信に満ちた変化を、僕は断然支持します。<br /><br />　それにしても、『文藝』最新号の柴崎友香特集はすごい！　ファン必読必携の豪華な特集だ。すべてのページが面白い。河出書房新社さん、ありがとう！　宝物にしなきゃ。 ]]>
        
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    <title>チャイルド44</title>
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    <published>2008-10-16T02:19:51Z</published>
    <updated>2008-10-16T02:25:16Z</updated>

    <summary>「月にどれだけ読むの」　しばしばこう尋ね...</summary>
    <author>
        <name>本の雑誌社</name>
        
    </author>
    
        <category term="<![CDATA[豊川堂カルミア店&nbsp;林毅]]>" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webdokusho.com/cafe/">
        <![CDATA[<p>「月にどれだけ読むの」<br />　しばしばこう尋ねられることがあるのですが、いやそれほどたいした冊数じゃないわけで、実際のところは。読みたい本をすべて読もうとするのなら、仕事を放り投げても時間が足りません。読む人ひとりに書く人たくさん。無勢に多勢では、端から勝負になりませんから。<br />　なので、毎日が「味見」の連続。立ち読み、歩き読み、休憩読み（そんな言葉はないか）と、ひたすら捲る。気になった本は、とりあえず頭から50頁ほどに目を通します。そこから面白そうな本を拾って（それだけなら月に何十冊も目を通せるので）そこから選抜したものを、最後まで読むことにしています。初めて読む作家については、とくにそれが重要（面白かったりするとつい全部読んでしまったりも、まま有りますが）。<br />　全部読めればそれにこしたことはありませんが、時間がなくなって結局手が出せない本が出てくる危険性（何が危険？）があるので、そうすると読むべき本を、結果見逃してしまうことになり、まずは出来るだけ手を広げておきましょうというのが私の作戦。（書評家の方々は、どうやって読む本の選別をしているのでしょうか）</p>
<p>　翻訳本はいざブームにならないとなかなか売れないことが多くて（ブームになればほっといても売れるわけで）、あまり最近は手を出さないことが多かったのですが、この新人の小説はなんだか面白そうなので読み始めたら、これがこれが想像以上にいい出来で、結局最後までそのまま読んでしまいました。<br />　こういう本を読み逃さないためにも、日々「味見」道に精進せねばなりません。（とはいっても間違いなく評判になる作品なので、結局後で読むかなとは思いましたが）</p>
<p>　物語の舞台は、スターリン体制下のソ連。<br />　主人公は、国家保安省の有能な捜査官であるレオ。<br />　国家を妄信し忠誠を尽くす彼は、スパイ容疑をかけられた医者を追うなか、部下の計略に嵌められ、東部の田舎に妻とともに民警として左遷されてしまう。そこで見た少女の惨殺死体は、モスクワ時代に事故として処理してしまっていた少年の遺体によく似ていた。疑問を抱いた彼は、独自に捜査を始める。<br />　はたして全国各地で少年少女が奇妙な「しるし」を残され、惨殺されていた。しかし革命により誕生した理想の国家には、犯罪が存在してはならない。連続猟奇殺人を認めない国は、別に犯人を仕立て次々処刑していく。彼はタブーを冒し危険にさらされながらも、真犯人を追っていく―。</p>
<p>　連続殺人鬼が出てくるからといってもサイコな小説ではなく（確かに次々と惨殺されていくのだけれど）、警察小説とも謎解きの小説とも言いにくい（確かに犯人には何者かは不明であるけれど）。このサスペンス小説はそれでは括れない重厚な物語を語っている。欺瞞と恐怖に満ちた社会そのものの怖さと、国家のために生きなければ生きていけない人たちの現実。それが重くのしかかる。そして主人公の過去と、妻の本音。これはひとりの男の再生の物語であるとともに、夫婦の再生の物語でもある。<br />　上巻ではソ連社会の現実をまざまざと見せつけられ、下巻に入ると（これが一気に）波乱の展開がたたみかけるように訪れる。（ダイハードの彼も逃げ出しそうな決死のシーンの連続に）前半のさまざまなエピソードも重なり合って一気に結末へと向かう。<br />　ラストのエピソードには、涙が出そうでした。いや、お見事。</p>
<p>　今年読んだ中では、これがいちばん。<br />「これだけの傑作には滅多に出会えないぞ」<br />（と思いながらも、次々出版される本の中にはまだまだもっとすごいのがあるのではないかと、次なる本の頁をまた今日も捲っています）&nbsp;</p>]]>
        
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    <title>おそろし ― 三島屋変調百物語事始</title>
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    <published>2008-10-09T01:40:08Z</published>
    <updated>2008-10-09T01:44:24Z</updated>

    <summary>　久田的苦手なのもの選手権大会を開いたら...</summary>
    <author>
        <name>本の雑誌社</name>
        
    </author>
    
        <category term="<![CDATA[精文館書店中島新町店&nbsp;久田かおり]]>" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webdokusho.com/cafe/">
        <![CDATA[<p>　久田的苦手なのもの選手権大会を開いたら、間違いなく１位は「怖いもの」だ。<br />　怖い本も、怖い映画も、怖い乗り物も、怖い人もみんなみんな苦手だ。怖い内容はいろいろだけど、特に「お化け」の類には近づきたくない。お化けが嫌いと言うとお化けが怒って乗り込んできそうなので、嫌いなのではなく親しみを持てないと言っておこう。<br />　<br />　子どもの頃、怖いもの見たさで買ってしまったお化けの本がめちゃくちゃ怖くて本当に怖くて。けれど捨てるわけにもいかず本棚の中で後向きに差し込んでおいた。それを遊びに来る度にちゃんと直していく従姉妹、あれはわざとだったのだろうか。<br />　<br />　遊園地のお化け屋敷はいつも混んでいる。時々、入ってすぐに恐怖のあまり騒ぎ過ぎて心配したお化けに付き添われて入り口から逆送される人がいる。あ、それ私だ。<br />　怖いと分かっているのに買ってしまうお化けの本、怖いと分かっているのに入っていってしまうお化け屋敷、そういう風に怖いものはなぜか人の心を惹きつけるらしい。<br />　宮部みゆき『おそろし』はタイトルからして怖そうである。あぁまた惹きつけられてしまった。<br />　<br />　主人公おちかは花も恥じらう１７歳である。当時でいう結婚適齢期。本来ならば幸せいっぱい夢いっぱいの年頃である。なのに、とある事件が起こり心を閉ざし自分を責めて生きている状態で叔父夫婦に預けられる。<br />　<br />　おぞましい事件を経験したおちかは、同じように不思議で悲しくて恐ろしい体験を持つ人の物語を聞くことで共感し受け容れそして開いてしまっていた「扉」を閉じていく。そうやって人の扉を閉めると同時に自分自身の物語も閉じていくのである。おちかはお江戸のお化けバスター、なおかつ今で言うセラピストだったりもするんだな。<br />　おちかに向かって語られた物語の何がどう怖いかは読んでのお楽しみなのだけど全てが「美しさ」に結びついているところがいかにも日本的だ。情緒的なのだ。美しく情緒的な怖さ、あぁ、魅せられるではないか。<br />　<br />　海外の怖い話がどずどすばしばしぐわーーっと外から来る怖さなのに対し、日本のそれはじわじわしとしとひやーーっと内側から染み出す。何となく背筋に来るのである。あぁ後を振り向けない。そこに誰かいるよぉ。<br />　<br />　そう言えば、サブタイトルが「百物語事始」となっている。まだ４つしか語られていない。ってことはまだ続くのか？続くのか？続くんだな！！　ひゃ～～っ！<br /></p>]]>
        
    </content>
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    <title>狼と香辛料</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.webdokusho.com/cafe/nagae/20081002111137.html" />
    <id>tag:www.webdokusho.com,2008:/cafe//7.2685</id>

    <published>2008-10-02T02:11:37Z</published>
    <updated>2008-10-07T09:12:19Z</updated>

    <summary>ライトノベルを読まず嫌いの人にぜひ読んで欲しい</summary>
    <author>
        <name>本の雑誌社</name>
        
    </author>
    
        <category term="<![CDATA[中原ブックランドTSUTAYA小杉店&nbsp;長江貴士]]>" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webdokusho.com/cafe/">
        <![CDATA[<p>乙一・有川浩・桜庭一樹・橋本紡。この四人の作家の共通項は？</p>
<p>なんて簡単すぎますよね。もちろん、ライトノベル出身の、一般文芸作家です。</p>
<p>ライトノベルはそもそも定義の曖昧なジャンルですが、最近のこの流れによって、より境界が曖昧になっている気がします。ちょっと前までは、普通の小説よりもジャンルとして劣った扱いをされていたと思いますが、最近では小説の一ジャンルとしての地位を高めつつあると思います。</p>
<p>僕のいる店では、とにかくライトノベルがやたら売れます。以前よりも遥かに売れるようになりました。新刊もどっさり入ってくるし、そしてそれが一瞬にしてなくなるのをいつも見ていると感動します。</p>
<p>ハチャメチャに売れるのを見ていると、なんとなく読みたくなってくるんです。ものすごく売れてるけど、そんなに面白いのかな、と。僕はもともとライトノベルはまったく読んだことがなかったんですけど、勉強の一環ということにして手を出すようになりました。</p>
<p>ただこれまで、かなり売れていて世間的にも評価が高そうなシリーズ物をそこそこ読んでみましたけど、どれもあまりピンときませんでした。結局ほとんど1巻目を読んで止めてしまっています。これまでなかなか、ライトノベルのシリーズで面白いと言えるものには出会えませんでした。</p>
<p>しかし、見つけましたよ。ライトノベルで初めて面白いと絶賛できるシリーズ作品を。それが、「狼と香辛料」です。</p>
<p>旅商人であるロレンスは、行商の途中、一人の少女を拾う。ホロと名乗ったその少女は、実は豊作を司る神だった。自分のことを「わっち」と呼ぶ、見た目は普通の少女だが、頭の回転の速さは凄まじく、また本当の姿はかなり恐ろしいものだった。</p>
<p>二人は共に旅をすることになる。自らの故郷を忘れてしまったホロのために、ロレンスは行商のついでに情報を集め、さらにホロを故郷まで送り届けてやろうと決めたのだ。</p>
<p>二人は行商を続けながら様々な町を巡るが、そこで商売上の様々なトラブルに巻き込まれることになる。二人は毎回その危機をなんとか乗り切るのだが...。</p>
<p>ストーリーや設定が非常にしっかりして読み応えがあります。トラブルに巻き込まれる過程、その渦中での人々のあり方、そのトラブルをいかに解決するか。背景や心情などについても非常に繊細に描かれます。物語の構成や展開も非常に巧いです。</p>
<p>しかし何よりも本作の魅力となっているのは、ホロとロレンスのやり取りです。彼らはずっと、相手の思考を読んで言葉で罠に嵌めたり、突然素直になって相手を翻弄したりと、ちょっと捻くれた形でイチャイチャし続けます。僕は既に5巻まで読みましたが、このやり取りの妙が、巻を追う毎にどんどん面白くなっていくわけで、つい読んでしまいます。</p>
<p>ライトノベルを読まず嫌いの人にぜひ読んで欲しいと思います。読書の幅が広がるかもしれませんよ。この作家もいずれ一般文芸の世界にやってきそうな感じがしますが、どうでしょうか。</p>]]>
        
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    <title>きのうの世界</title>
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    <published>2008-09-25T09:27:15Z</published>
    <updated>2008-10-02T08:51:58Z</updated>

    <summary>読者をひきつけてぐいぐい読ませる力</summary>
    <author>
        <name>WEB本の雑誌</name>
        
    </author>
    
        <category term="<![CDATA[東山堂&nbsp;外販セクション&nbsp;横矢浩司]]>" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webdokusho.com/cafe/">
        <![CDATA[<p>　僕の仕事は配達業務を兼ねた営業なんだけど、突然の激しい雨にはいつも泣かされる。相手方の時間に合わせ到着したのに営業車から出られない！　でも『配達あかずきん』の博美ちゃんみたく「あら、どうしましょう」などと本社に電話をかけていては仕事にならんので、猫背の姿勢で本を守りつつさっさとずぶ濡れになって玄関口までダッシュ！　着いた途端に降り止んだりして。なんか損した気分。それでも止んでくれればまだいいほうで、一日中悪天候の日などはどんどんテンションが下がってくる。「せめて平日は晴れてくれー」なんて願ってみても、土日に雨が降り続けばそれはそれで気分が悪い。でもやっぱり、今年は突発的な豪雨にあう確率が高い気がするなあ。</p>

<p>　今回は恩田陸さんである。いちばん好きな作家は？　と聞かれれば迷わずその名前を答える方だ。角川文庫の編集長（嬉しい復刊多数）やら、講談社文庫のアンソロジーの選者（巻末解説の高橋克彦→西澤保彦という読書案内、新鮮！）やらで、読書人のツボを押しまくっているここ最近だが、いよいよ待ちに待った新作長編の登場なのである。</p>

<p>　１０年前、個人的にいろいろあった時期に『三月は深き紅の淵を』の第一章「待っている人々」に出会い、心のモヤモヤが幾分和らいだ。「好きなことは続けていいんだよ」と言ってもらえた気がした。そしてこの人の本を永遠に読もうと決めた。以来、新刊が出るたびに必ず購入し、本作まで全ての作品を読んできた。そんな僕にとって、「これは私の集大成です」という著者の言葉は、とてもリアルに感じられる。ブレイク直前の、恩田作品の魅力がじわじわと世間に浸透していくのを肌で感じられたあの頃の静かな喜びを、読んでいる間じゅうずっと思い出していた。過去作品を連想させるいろんなモチーフがそこかしこに散りばめられているのも嬉しい。もちろん「縮小再生産を回避すること」を自らに課している恩田さんのこと、単に似ているだけではなく、終盤の怒涛の展開、立ち昇る風景、明かされる驚愕の真相など、いままでの作品を凌駕する力技を見せてくれる。読後の不安定な味わいも恩田さんならでは（謎はきちんと解かれるのにね）。読者をひきつけてぐいぐい読ませる力は、ここ数作ではいちばんかも。「物語ること」をほんとうに楽しんでいるのが伝わってくるのだ。</p>

<p>　ところで、なにゆえ今回、冒頭の話題から始めたのか、読み終えた方はもう、お分かりですよね？</p>]]>
        
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    <title>アカペラ</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.webdokusho.com/cafe/hayashi/20080918183332.html" />
    <id>tag:www.webdokusho.com,2008:/cafe//7.2663</id>

    <published>2008-09-18T09:33:32Z</published>
    <updated>2008-10-02T08:08:09Z</updated>

    <summary>胸にじんわりと沁みてくる具合が、とても心地いい</summary>
    <author>
        <name>WEB本の雑誌</name>
        
    </author>
    
        <category term="<![CDATA[豊川堂カルミア店&nbsp;林毅]]>" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webdokusho.com/cafe/">
        <![CDATA[<p>あまり声をかけて売ることのない書店員にとって、POPを書いてその本の普及につとめるのは、大切な仕事のひとつ。でもそれが難しい。なんて書いたら売れるのだろうかと、毎度毎度私の頭を悩ませるのである。（名編集者の推薦帯やカリスマ店員のメッセージのように気の利いたフレーズなんて、考えたからってなかなか浮かぶものじゃありません）<br />
　それでも（これまで書いてきた少なくないPOPの中に）まれには当たりもあって、たまには自信の出来もあったりします（まあ自分なりには、ですけども）。<br />
たとえばこんなの。【江國香織を読んでいる人には、美人が多い】（直木賞受賞以前に全点フェアをしたときのもの）とか、【ヒトは悲しいから　泣くんじゃない。泣くから　悲しくなるのだ 。いつかきっと　泣かないあなたに出会えますように】（家田荘子さんの『「壊れてしまいそうな私」をささえる本』に）とか。</p>

<p>いつも使ってしまうホメ台詞というのもあって（POPにも定番があるのか？）、【この作家は直木賞を獲る】（私ならこの作家、この作品にあげたいよーということ）というもの。けっこう気に入って長年使っています。<br />
お蔭様で（？）重松清さんや宮部みゆきさん、角田光代さんと、無事にみなさん受賞されました。でも、たんなる書店員の私の勝手な評価と憶測と願望でありますので、思惑通りにならない場合も多々あります（本多孝好さん、中山可穂さん、佐藤多佳子さん、荻原浩さんはまだでした、ゴメンナサイ）。<br />
山本文緒さんも直木賞をあげたいと思っていたうちのひとりで、でもいざ直木賞を受賞したら本が出なくなってしまって、これが実に6年ぶりの小説。久しぶりの出会いに興奮しつつ読ませていただきました。</p>

<p>『アカペラ』は三つの中篇からなる。（通したテーマはないようだけれど）どれも離婚話があり、少々込み入った家庭環境があり、ちょっと無茶な恋愛ドラマも展開される。</p>

<p>表題作「アカペラ」は、中学三年生・タマコの物語。離婚間近の両親がいて、母は家出ばかり。そんななか72歳のじっちゃんに恋心を抱く彼女は、二人で暮らそうと自立しようとする。<br />
続く「ソリチュード」は、父親の死去をきっかけに、20年前家出した実家に帰った38歳のダメ男・春一の物語。いとこで元恋人である美緒の小六の娘・一花との出会いを通して、過去のわだかまりや、なくしてしまった恋を整理し、自分を取り戻していく。<br />
最後の「ネロリ」は、虚弱な弟を養い暮らす50歳目前の独身女性・志保子の物語。会社をリストラされ年下男性に求婚されるなか、弟を慕う19歳の少女・ココアが登場し、不思議な三角関係をなしていく。</p>

<p>不器用でぎこちない人間関係と、ちょっと変わった愛情のカタチ、愛情の深さ。たぶんの親近感をおぼえつつ、前向きに生きる彼らが、なんだか愛おしい。独特のユーモアも交え、その感触は、さらりとやわらかい。胸にじんわりと沁みてくる具合が、とても心地いい物語でした。</p>

<p>さて、どんなPOPを付けたら、皆さんにこの物語を手にしてもらえるか、ここからが悩みどころであります（いまから悩んでどうする）。</p>]]>
        
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