9月6日(金)

 道の端っこが川になるほどの激しい雨。車を避けながら中央を歩く。朝から弱まることなく降り続く。出勤時、傘を差しながら自転車に乗り、駅に着いたときにはすでにスーツのズボンの折り目がなくなっていた。雨を蹴飛ばしながら走る通勤電車のなかから雨粒を眺めていると、なんとなく営業にでるのが億劫になってしまった。しかし、こういう日は売場が空いているので、逆に営業日和ともいえる。因果な商売。

 9月の新刊『注文の多い活字相談』の事前注文の〆切が迫っているため、そうそうぼんやりしてられない。まだ注文の取れていない書店さんを電車に乗り継ぎ、グルグル廻る。結局、雨だろうが、雪だろうが、ひとり営業は外に出ざる得ないのだ。まあ、淀んだ会社にいるより100倍増しだけど、いつまで気力と体力が続くのか最近不安になることもある。

 この新刊、書名を決めるのにかなりの悶着があった。本の雑誌社内で、一番ツライのは雨に濡れる僕ではなく、多分単行本編集の金子だろう。鬼の編集・発行人浜本と、勝手なことばかりいう営業の僕の間に挟まれ、なおかつ著者は装丁家と打ち合わせもしなくてはならいなんて。だから金子は、唸ってばかり。

 昨年末に新刊スケジュールを打ち合わせしたとき、『注文の多い活字相談』の仮書名は『新・日本読書株式会社』。何だかそのまま何も考えず、本になりそうな勢いだった。

 しかし、そもそも僕は、第1弾をまとめたときの『日本読書株式会社』という書名が気に入らなかった。それだったらHPの連載同様『読書相談室』にして欲しいと訴えていた。ところが、この企画自体を考え出した顧問目黒から強烈なプッシュ。目黒にしてみれば、自分の夢だった企画なのだから『日本読書株式会社』という言葉に強い思い入れがあったのだろう。

 営業マンとして「売れている本」眺めていると、非常にわかりやすい書名の本が多い。書名を読めば、1発で内容がわかるような、あるいは売り文句そのものようなものだ。

 だから僕は、単行本の企画が挙がるたびに一番わかりやすい書名を考え、金子に伝える。しかし文芸編集者の誇りを持っている金子の感覚とは、かなり開きがあるようで、「スギエッチが挙げるのは、みんな実用書やビジネス書のタイトルだよ、それは文芸書の場合、帯の言葉なんだよ」と却下されている。

 しかし、それこそ僕の考えで、今は帯と書名が逆転しているのではないかと思っているのだ。

 そういう考えをまったく論理的ではない言葉で僕は金子にぶつける。金子は決して人の意見を尊重しない編集者じゃないから、微妙に参考にしながら、妥協点になる書名を挙げてくる。そして僕もある程度納得できる書名が出来上がると、最終的に浜本のところへ持っていく。しかしここでまたダメ出しが出たりする。

 苦悩のなかで決まった『注文の多い活字相談』。僕はこの本がとても好きだ。本はひとりで読んでいてもなかなか広がることが難しい。それが、この一個人の相談を読むと意外と似たような本を読んでいる人がいて、その解答が非常に参考になる。すでにゲラの段階で僕はフセンを貼っていて、未知の作品の読破に燃えている。

 ちなみにコレ、営業トークではありません。

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