4月17日(火)

 本屋大賞が終わってから気持ちも新たに営業に邁進しているのだが、やっぱり営業は楽しくて難しい。たった一言から盛り上がることもあれば、盛り下がることもあるし、前回の訪問と今回の訪問でまったく対応が違ったりするから、常に緊張感がある。特に最近は担当者さんがころころ変わることも多く、なかなか継続した人間関係が築けず、苦労することも多い。

 営業というとつい「話す」ことを思い浮かべる人が多いと思うけれど、僕が思う営業は「聞く」ことが基本だったりする。どんな本が売れているのか? このお店の客層はどんな人なのか? そういったことをひとつひとつ聞いていると今度はそれが「知る」ことに繋がり、知れば知っただけ、そのお店に有用な情報や商品を提供できる。そして知れば知るだけ「好き」になることができるわけで、例え商品を愛せなかったとしても、営業先を「好き」になれれば充分で、もしかしたらそれが営業にとって一番大切なことかもしれないと考えたりする。

 難しいのは好きになったお客さんに自社の商品が役立つのかどうか? 例えば中には「いいよ〜、好きなだけいれて」なんて書店さんもないわけではないんだけど、そういうとき自分のところの本より、今結構売れているあの本やこの本を置いた方がいいんじゃないかと思ってしまうのだ。「なんだったら僕が注文短冊切っておきますよ」なんてとても会社の人には聞かせられない言葉を飲み込みつつ、その辺は臨機応変に判断しつつ、折衷案でうまく凌いだりしている。

 この仕事を始めた頃、とある営業代行(出版社から営業活動を委託されている会社)の方にそんな悩みを打ちあけたら「そんなこと考えてちゃダメですよ! 向こうの気持ちなんて思ったら営業なんて出来ません」なんて叱責されたことがあったっけ。

 でも元々営業に向かない人間が営業マンになってしまってすでに十数年。今でもお店に入る前は胃がキュッとするし、深呼吸して落ちつくようにしている。そして書店員さんに会えば、緊張し、あれも話そうこれも話そうと思っていたことが話せず、反省の繰り返し。ハッキリ言って続いているだけ立派という感じなんだけど、それでもこの緊張感と、人を相手にする面白さは何ものにも代え難く、漁師にならない限りは、今後もこの仕事を続けていくのだろう。

 『消えた女 彫師伊之助捕物覚え』藤沢周平著(新潮文庫)を読みながら、そんなことを考えていた。

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