8月28日(火)
5日間の夏休みを終え、久しぶりに出社。
僕はたいして仕事をしていないから、メールも郵便物も貯まってない。
あるのは飲み会の誘いだけ。
夏休みを利用して、編集長の椎名さんの本を読み返す。『哀愁の町〜』から始まり、『新宿どかどか団』に辿り着くが、こうなるとクセになるのが椎名本。そこで積ん読になっていて、それを父親が持っていき「すごく面白かった」と感想を漏らしていた『波切り草』(文藝春秋)を読み出す。そして驚く。うわ! これ傑作じゃん。
舞台は昭和30年代の千葉の小さな漁師町。父親を早くに亡くし、異母兄弟を含め5人兄弟の下から2番目の中学生・松尾勇が主人公。こう書けば椎名ファンには馴染みの設定で、松尾勇は『銀座のカラス』など自伝的小説で椎名さんがよく使う主人公であるから、先の展開も読めるだろう。
ところが、これが第4章の「山の上」から、いつもと違う展開になり、そこから始まる物語は、井上靖の『しろばんば』『夏草冬波』(ともに新潮文庫)のような、優しさに満ちた、しみじみと胸にくる少年小説なのである。そしてこのラスト1行の感動…。ああ、今まで未読でスミマセンでした。
なんて感動しているうちに夏休みが終わり、目の前にその著者がいる暮らしが始まる。思わずサインをもらおうかと思ったけれど、どうせなら接待費の精算書にサインを貰おう……。うーむ、改めて不思議な会社である。