世紀の架け橋におこたで読みたい本100冊+2

+++ 目黒考二編 +++


20世紀もあとわずか。もういくつ寝ると、おお、21世紀がやってくる! というわけで、「WEB本の雑誌」の年末特別企画は、20世紀から 21世紀にかけてぜひとも読んでおきたい100冊のブックガイド。「本の雑誌」発行人・目黒考二と「WEB本の雑誌」の14人の新刊採点員が世紀の変わり目にふさわしい、きわめつけの面白本をオススメしてしまおうという大胆企画だ。勢いあまって100冊をちょいと越えてしまったが、いずれも20世紀に出た本ばかり。 さあ、読み残した本はないか。百年に一度のこの機会におこたでじっくり本を読もう!


- 目黒考ニが選んだ60冊 -

 これまで読んで来た本で印象に残っている本(現在も入手可能な本)をずらずら思い出すまま書き出したら、こんなラインアップになった。どれも愛着のある本ばかりなので、順位は付けづらいが、あえて10冊を選ぶなら、『虹滅記』「十二国記シリーズ」『ドサ健ばくち地獄』『消えた少年たち』『リプレイ』『影武者徳川家康』『赤い影法師』『フィーヴァードリーム』『文政十一年のスパイ合戦』『夜が終わる場所』の10冊だ。

 『虹滅記』は父と祖父の伝記で、これに一歩でも近づくものを書きたいというのが私の長年の野望なのである。まあ無理だろうけど。

 「十二国記シリーズ」は2001年の春に待望久しい新作が出るようだが、息子に本はすすめないと決めていた私がたった一度だけ禁を破ってしまったのがこれ。ファンタジー嫌いの私がハマってしまったのは、根源的な力に満ちた書であるからに他ならない。

 『ドサ健ばくち地獄』は日本のギャンブル小説が生んだ最高傑作。
 『麻雀放浪記』は物語が面白すぎるので、阿佐田哲也の本質が見えにくいが、これはモロ。凄まじい書だ。これを越えるギャンブル小説はおそらく生まれないだろうという淋しい確信がある。

 『消えた少年たち』は、家族を持つ人、これから結婚する人、すでに結婚している人、すべての人に必読の夫婦小説であり、家族小説であり、親と子の小説である。子を育てることの不安と孤独、そして力をこれだけ鮮やかな物語のなかに描いた小説を私は他に知らない。

 『リプレイ』は四十三歳の主人公が十七歳の自分にタイムスリップするところから始まる小説で、つまりはこれからの二十五年間に起こることをすべて知っているとの設定である。さあ、あなたはもう一度、自分の人生をどうやって生き直しますかという小説だ。私がこの長編を読んだのはちょうど四十三歳のときだったので、もう胸キュンである。四十三歳の人は必読。

 『影武者徳川家康』は隆慶一郎シンドロームの原点。時代小説を読み慣れていない人はぜひこの長編から入られたい。すごいぞ。

 『赤い影法師』は時代小説を数作読んだあとに手に取るとびっくりする。こんなに奇想天外な小説がはるか昔に書かれていたことに、この作家の特異な才能に、驚く。

 『フィーヴァードリーム』はどうして評判にならなかったのかがわからないほど、色彩感に富む物語だ。時代は南北戦争直後。舞台はミシシッピ川。蒸気船の船長と吸血鬼との友情物語である。人間と吸血鬼との間に友情と成立するかがテーマ。

 『文政十一年のスパイ合戦』は歴史読み物がお好きな読者に断然のおすすめ。シーボルト事件を描いたノンフィクションだが、あの事件の背景にあった真実をスリリングに炙りだすのである。一級の歴史ノンフィクションで面白いの何の。

 最後の『夜が終わる場所』は2000年度の翻訳ミステリーのベスト1。これは粗筋も知らずに読まれるのがいい。悲しい青春小説であり、胸をうたれる友情小説であり、切ない恋愛小説である。

 他の作品にも触れたいところだが、きりがないのでこれにて打ち止め。機会があれば、また書きます。