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| ボローニャ国際ブックフェアレポート 絵本原画展 | |||||||||||||||
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取材・文:山尾実花 |
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![]() 見本市会場入り口。参加各国の国旗がにぎやかに迎えてくれる (c)Yutaka Hashimoto ![]() 絵本原画展コーナー。見本市会場を区切ってスペースが設けられている (c)Yutaka Hashimoto ![]() 2004年度ボローニャ絵本原画展アニュアル。イラストは出久根育さん ![]() 2003年度BIBグランプリ受賞者の出久根育さん ![]() 初日のメッセージボード。貼り紙は、まだまばら ![]() 話に聞き入る人たち。日本の編集者の姿もちらほら ![]() 板橋区立美術館学芸員の松岡さん ![]() パネルの下で熱弁をふるうガレットさん ![]() 首のかしげ方の類似性を指摘するパネル ![]() 偕成社社長の今村さん ![]() イラストレーターの売り込みスタイル ![]() 行列はそのブースに編集者が来ていることを知らせてくれる ![]() ミヒャエル・ノイゲバイアーさん ![]() 最終日。メッセージびっしりのボード ![]() きりがないとわかっていても見始めるとやめられなくなるメッセージたち |
ミラノ、フィレンツェ、ローマ、ナポリほど知られてはいないものの、イタリア人が住みたい街としてトップランクに入る食通の都ボローニャ。中世の町並みが残るこの街で、毎年4月に世界で唯一の児童書の国際ブックフェアが開催されています。今年は、63ケ国から1100社が参加したとのこと。日本で“ボローニャ国際〜”といえば板橋区立美術館を皮切りに各地で行われる絵本原画展のイメージが強いですが、本場ボローニャでメインなのは版権のやりとり。世界各国の出版関係者が集まるビジネスのためのフェアなのです。入場券も一日券が20ユーロ(約2700円)とお安くはありません。 そんな見本市会場の一角に、せっかく児童書の出版社が集まってフェアをするのだから、と始まった絵本原画コンテストの入賞作を展示するスペースがあります。ここで展示された作品たちが、日本にやってくるというわけ。今年は、入賞作品集のカバーのイラストを担当した出久根育さんのコーナーも開設されていました。『穴』(ルイス・サッカー作/幸田敦子訳/講談社)、『ペンキや』(梨木香歩作/理論社)などの表紙画や挿絵を手がけた画家といえば御存じの方も多いのでは? 彼女は2003年に『あめふらし』(グリム童話/パロル舎)という作品で、ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB: Biennial of Illustrations Bratislava/Slovakia)の最高の賞であるグランプリを獲得しています。これは瀬川康男さん、中辻悦子さんに続く日本人として3人目の受賞です。1967年に始まったこの賞は、出版物ではなく、原画を審査対象にしています。各国からの出展画家数は制限されていることもあって、選び抜かれた画家の中からの受賞なのです。現在はプラハに住んでいる彼女はまだ30代。これからの活躍が楽しみです。 その注目の出久根さんを囲んで、フェア初日には彼女の作品世界を紹介するイベントが行われました。 とはいえ、ここは会場にいる人の割合で何語に翻訳するかが決まる国際的な場。いつもは英語とイタリア語というパターンなのです。ところが日本人の参加が多かったこともあり、キューレーター役のガレットさんが話す英語も日本語に翻訳されて進められることになりました。「これは始まって以来のこと!」と司会役の板橋区立美術館学芸員の松岡さんから興奮気味の発言が飛び出しました。同席していた日本人たちは、その歴史的なイベントに参加できた喜びをかみしめながら、日本語に耳を傾けたのです。 ガレットさんは、パネルにイコンと並べて聖母マリアと同じような首のかしげかたをする『ペンキや』(理論社)の主人公を映し出し、中世の中央ヨーロッパ的な雰囲気を取り込んでいることを指摘していきました。そして、出久根さんがさまざまな西洋絵画の雰囲気を巧みに自分の作品に取り入れていることを、会場にいる誰もが「なるほど」と見てとれるように解説してくれたのです。 「西洋の人が取り出せないところを取り出しているのが、すごいと思った。表面的なことではなく、より深いものを求めてそこにたどり着いていることに」という発言でしめくくったガレットさん。出久根さんの作品に対する、深い理解と愛を感じさせる内容でした。 日本人も黙ってはいられません。コメンテターとして出席していた偕成社社長の今村さんは「『はるさんがきた』(鈴木出版)という作品を見たときに、今後彼女が進む方向の一つはこれではないかと思った。雪が主人公という、絵で表すにはとても難しい内容を見事に表現している」と新しい作品とその方向性について熱く語ってくれました。 「今はおとぎ話的なものに興味を持っているのですが、今後はストーリーを深く読み込み、自分だけの表現を見つけていきたい」という出久根さん。今村さんもラブコールを送っていましたが、絵だけでなく文章も手掛けた完全オリジナルの新作に是非チャレンジして欲しいものです。 出久根さんのイベントが行われた会場の入り口近くにあるオープンスペースは、イラストレーターズ・カフェと呼ばれています。会期中、時間になると様々なイベントが行われているものの、時間内でも出入りは自由。参加料もかかりません。イベントの内容は、児童書の出版関係者たちや会場を訪れているイラストレーターたちに向けたものです。 じつは、ボローニャは交通の便がよく、イタリアは元よりヨーロッパ各地のイラストレーターたちがこの見本市会場を目指して押しかけます。アポイントが取れている人もいますが、ぶっつけ本番の人が大多数。ブースを出している出版社にしても、版権の担当者や事務処理だけにくるケースもあるため、編集者にその場で巡り会えることはまれです。とはいえタイミングがよければ、お互いに求めているものが同じ相手に会えるかもしれず。チャンスを自分の足と感覚で探す、黒いファイルバッグに作品を詰めた明日を夢みる人々の熱気も、この見本市特有のものなのです。 イラストレーターたちの間でも人気が高い編集者といえば、ミヒャエル・ノイゲバウアーさん。彼が所属(経営)している会社は毎年イラストレーターたちの行列ができることで有名です。今年は個人でブースを構え、打ち合わせや、ひっきりなしに訪れるイラストレーターたちとのやりとりに休む間もなく忙しい様子でした。 毎年、人通りの多い原画展ブースの一角に、原画を展示するために立てられた壁の反対側を利用したメッセージボードが設置されます。 最終日。壁は会場を訪れたイラストレーターひとりひとりが残していった連絡先などを記した貼り紙で埋め尽くされていました。彼らはフェア期間中に情報収集また交換し尽くし、早くも来年のことを思いながら、帰っていったに違いありません。
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