WEB本の雑誌これまでのログ倉庫>絵本を遊びつくせ!vol.1


● 仕掛け絵本プロジェクト2004 ●

絵本を遊びつくせ!


 子どものとき、あるいは大人になってからという違いはあるにせよ、絵本を1冊も見たことがない、知らない日本人は多分いないと思う。絵と文字が分かち難く結びついた、紙でできたメディア「絵本」。今年夏、そこに「仕掛け」という遊びの要素を加えた絵本のシリーズが教育画劇から出版された。既に数々の作品を世に送りだしている絵本作家たちの「仕掛け」絵本だ。それは国内外に今まであった「仕掛け」メインのものとは異なる、全く新しい楽しさを持つ絵本たちだった。その新しさは「本」というメディアが持つ可能性を広げ、捕らえ直すきっかけを与えてくれているように思えた。
 なぜ、どのようにして、これらの絵本は刊行されたのか? 企画・製作の秘密から、今日の「仕掛け絵本」をめぐる様々な意見や状況まで、ひとりひとりの関係者を訪ね証言を集めた。

文と写真:山尾実花
text & photographs: Mika Yamao

第1回 2004年・夏 『仕掛け絵本』革命勃発 【JAPAN】
 初心者というスリリングな体験   
沢田としき さん(絵本作家)


  妖怪で仕掛けの絵本、という企画を知ったとき、おもしろそうやりたいって思いましたね。実際に住んでる「代田」ゆかりの妖怪「だいだらぼっち」を主人公にしようと考えて。今回、ポップアップ絵本に関して、みんなが初心者っていうのがよかったんじゃないかな。あらかじめ決められた仕掛けに絵を付けるだけだったら、それ程面白いものにならなかったと思う。そうじゃなくて、何にもないところから始まったからね。本当に手探り状態、スリリングだった(笑)。

 海外の仕掛け絵本をいろいろ研究しました。てんぐの動きはこの部分を参考にしようとか。仕掛け絵本って、描くだけじゃなくて絵に合わせた動きを加えられるおもしろさがある。立ち上がってくるおもしろさなんだよね。この人物はこういう動きでいこうとか、ここはこう見せたいとか。でも、絵本なんだよ。ページをめくることで次のシーンが新しく始まる。めくることで、立体的に仕掛けが動く。たたむと平面に戻る。

 本っていうメディアの持ってる力ってスゴイと思った。いろんなことができること、実感しましたね。


 ポップアップの使い方に作家性が出た   
石井信久 さん(ポップアップデザイナー)

 「アンパンマン」の仕掛け絵本の仕事をしています。今回キャラクターメインの絵本ではなく、ページをめくる度に現れる画面のひとつひとつに、読者に新鮮な驚きや喜びを与えながら物語を見せることのできる作家さんたちの最初の仕掛け絵本ということで、企画がいいなと思いましたね。

 予算があるから仕方ないんですが、希望をいうなら仕掛けのあるページは袋状にして、仕掛けののりしろは全てそこに落としこみたかったです。とにかく絵がいいから、仕掛けの裏の事情は見えなくしたかったな。

 沢田としきさんと、荒井良二さんの本を担当しました。「ひとりぼっちのだいだらぼっち」についていうと、どこにどういう仕掛けを入れたいというのは沢田さんから希望があって、僕はそれを具体的に仕掛けとして設計図を引くというやり方を取ってます。大きく動く仕掛けの他に、めくって見つけて楽しむ小さくて単純な仕掛けもありますが、どれも沢田さんからの提案ですよ。どういう仕掛けを選ぶかで作家性が出た気がします。

 海外だと仕掛けに凝った絵本が市民権を得ている気がしますけど、日本は違う気がします。確かにいま出回っているものって、仕掛けの見事さだけを見せつけるようなものや、オプションとしてポップ・アップがついているだけのものが多いような気がしています。でも今回のシリーズは、画面のひとつひとつに物語を宿す力のある作家たちが仕掛けを効果的に使ってますよね。これは画期的なことだと思います。ここまで絵本の「おはなし」や「画面展開」と「仕掛け」が有機的に絡み合って効果をあげている例は、あまりなかったんじゃないかな。

 


 実はみんな待っていた?仕掛け絵本のニーズ 
清水祥三さん(福井県福井市「じっぷじっぷ」書店社長)

 

 

 作家のラインナップが豪華だよね。今までにこういう仕掛け絵本って、なかった。

 欲をいうなら、それぞれの作家の持ち味にあわせて版型や紙質を工夫してもよかったのにという気もする。同じである必要あるのかな。全員絵本作家として、自分の世界を確立している人たちなんだし。

 買っていくのは、大人が多いね。それぞれのファンが。この間、子どものために買うって人が、全部に目を通して、仕掛けの数と凝り具合をチェックして買っていったよ。お買い得なものをね。

 文京店も種池店も、出てすぐは新刊棚で、それからは仕掛け絵本の棚に入れた。ビニールはとったよ。見れないんじゃ売れないから。ちゃんと見て買って欲しい内容だったしね。

 夏に種池店(補足を参照のこと)で、仕掛け絵本のフェアをやったんだよね。入ったすぐのところの店に入った誰もが1度は目にする場所。平台の、夏休み向けブックフェアの裏面にちゃんとしきり立てて。帰りに絶対目につくようにしてさ。D社さんに協力お願いして、出版社から書店直送にしてもらって、ビニールパッキンはとっちゃっても返品OKにしてもらったんだ。そうしたら、結構売り上げよかったんだよ。買っていったのは、若いカップルとか、大人。今まで絵本とかには目を向けなかった人たちが意外に多くてね。ちょっと楽しかったかな。フェア終わってからも、あのときの絵本が欲しいって注文する人が多かったよ。仕掛け絵本って、子どものころどこかで見ていたり遊んだ記憶があって、懐かしくて買っていくみたい。そういう層が、荒井良二さんのこと全然知らなくてさ、「ようかいアニミちゃん」を買っていって、それで荒井良二さんっておもしろいじゃないの、と思いながら本屋の棚みたら、なんだかたくさん絵本があるね…みたいなの、アリなんじゃない? 

 各作家さんごとに絵本を並べてる大規模な書店さんだったら、仕掛けのない絵本の中に今回の仕掛け絵本をいっしょに入れて、どう動くか試して欲しいね。


※補足 「じっぷじっぷ」福井市内に文京店と種池店の2店鋪ある。種池店は50台以上の駐車場スペース有。スーパーマーケットの隣に位置する郊外型店鋪。アダルト雑誌から児童書絵本まで幅広い品揃え。原画展などのイベントにも積極的に取り組んでいる。


 『ひとりぼっちのだいだらぼっち』の仕掛けについて

 

せつない表情を浮かべた、こんな美少年のだいだらぼっちが、かつていただろうか?

まず、ヤッ、トォーとかけごえが聞こえてきそうな天狗のページにワクワクしよう。

次に、だいだらぼっちの足があらわれるシーンでドキドキし、大きな大きなだいだらぼっちが、もっくりとあらわれるシーンにオオと歓声をあげていただきたい。

小さい手に仕掛けを探してもらってから、おはなしを読むと盛り上がる「てんぐ」と「おに」のページにも注目。指先でおはなしを動かす魔法めいた楽しさは、仕掛け自体はささやかなものでありながら味わい深く、作者の小さな読者に対するまなざしのあたたかみを感じさせる。

さみしがりやのてんぐ、さみしがりやのだいだらぼっちが、おしまいのページでそれぞれ幸せそうなのもいい。

さて、読み終わったあなた。ページのすみを、ちょこまかと動き回っている「きつね」と「うし」のこと、気がついたかな?

 


【仕掛け絵本の動き】

〜だいだらぼっち編〜



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次回は長谷川義史(絵本作家)さん、徳永真紀(編集者)さん、増田喜昭(子どもの本専門店「メリーゴーランド」店主)さんです。



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