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WEB本の雑誌これまでのログ倉庫>目黒考二のゴールデンウィークには大河小説だ!
 

目黒考二のゴールデンウィークには大河小説だ!

別にゴールデンウィークでなくても、大河小説はいつ読んでもいいのだが、ま、長い休みのあるときに読みましょうということで。傑作大河小説はたくさんあるけれど、今回はただ1点のおすすめ。ビィクトル・ユゴー『レ・ミゼラブル』だ。


 名のみ知られていて、実際は読まれていないという大長篇小説は少なくなく、わが国の中里介山『大菩薩峠』もその一つだが、『レ・ミゼラブル』もあるいはその系譜に連なる作品かもしれない。子供向けの抄訳本を幼いころに読んでしまうと、今さらねということになり、読まないまま書棚にしまってしまうことが少なくない。おそらく、『レ・ミゼラブル』もそんな本だ。

 ところが、完訳本で読むと、これはひたすら面白い小説である。なぜなら、ジャン・ヴァルジャンが下水道に逃げ込むシーンになると突如物語は中断し、パリの下水道の歴史が延々詳述されるのである。私が読んだのは河出書房のグリーン版世界文学全集だが、2段組で50ページは超えているから、その間400字詰めの原稿用紙にして150枚(たぶん)はある。修道院に逃げ込むシーンになると、今度は修道院の歴史が詳述される。それもまた150枚はあろうかという分量だ。この大長篇は、そういう脱線の連続なのである。ワーテルローの会戦描写が延々挿入されたかと思うと、宗教エッセイのようになる箇所もあり、隠語の起源まで出てくるから、物語がまっすぐ進まない。しかし、これが実に面白い。子供向けの抄訳本では、おそらくそういう「脱線」部分はカットされているのだろうが、これが全部あってこその『レ・ミゼラブル』なのである。そういう部分を取ってしまったら、残るのは粗筋だけだ。『レ・ミゼラブル』のだいご味は、この脱線していくリズムにこそある。つまり、19世紀の全体小説だ。

 高田宏さんが『長篇小説礼賛』のなかで、『レ・ミゼラブル』は壮大な挿話の連続で成り立っている小説であると書いたことがあるが(いま手元に本がないので正確な引用ではないが)、まさしくその通りなのである。それを読みにくいと感じる読者もいると思われるが、年を取ってから読むと、この「脱線」部分がまことに面白い。私が読んだのは三十五歳すぎで、いやはや、面白かった。子供のときに完訳本を読んだとしたら、おそらくその「脱線」部分は退屈だったろうから、抄訳本の方法も間違ってはいないけれど、出来れば完訳で読むと、『レ・ミゼラブル』はその十数倍、面白い。

 子供のころに抄訳本を読んだ人も、全然読まなかった人も、いま完訳本で読むことをおすすめしたい。いろいろな版があると思われるが、どの版でもいい。今年のゴールデンウィークは『レ・ミゼラブル』だ! 

 

※この企画は2001年5月に掲載しました。

ヴィクトル・ユゴー 文学館 潮出版社シリーズ
   
ヴィクトルユゴー
文学館第2巻

本体 4800円
2000/7
ヴィクトルユゴー
文学館第3巻

本体 4800円
2000/8
ヴィクトルユゴー
文学館第4巻

本体 4800円
2000/9
   
レ・ミゼラブル 岩波文庫 シリーズ
レ・ミゼラブル1
本体 760円
1987/4
レ・ミゼラブル2
本体 760円
1987/4
レ・ミゼラブル3
本体 660円
1987/5
レ・ミゼラブル4
本体 800円
1987/5
 
 
レ・ミゼラブル 新潮社文庫 シリーズ
レ・ミゼラブル1
本体 629円
1996/6
レ・ミゼラブル2
本体 590円
1996/6
レ・ミゼラブル3
本体 552円
1996/6
レ・ミゼラブル4
本体 705円
1996/8
レ・ミゼラブル5
本体 629円
1996/8
 
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