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ブックセンターほんだ/高村和宏
2006年11月16日
『東京少年』
『東京少年』

【 新潮社 】
小林 信彦
1,680円(税込)
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 戦時中、集団疎開と縁故疎開の両方を体験した著者の自伝的作品である。

 第1部では山奥の寒村の寺での集団疎開時の出来事が描かれる。親もとを離れた子どもたち同士に軋轢がうまれ、いじめというか争いごとが続きなんとも悲惨である。副級長を剥奪されるなど主人公も一時微妙な立場にたたされる。そのうえ飢餓にも悩まされる。つらい生活なのに親に送る手紙には楽しく元気で暮らしていると嘘っぱちの内容を書く子どもたち。ジフテリアの蔓延、次第に激しくなる空爆、東京からの残酷な知らせ、死んでいく友達・・・。集団疎開先の子どもたちも確かに「戦争」のなかにいたのだ。

 第2部はその後家族とともに新潟へ縁故疎開して敗戦をむかえ東京にもどってくるまで。中心に描かれるのは敗戦をむかえた少年の戸惑いだ。新聞が嘘を伝えているのはすでに見抜いていたが、日本が負けることは主人公にとって「あるはずがない、あってはならないこと」であった。それもそうだろう、今まで一億玉砕と言われていたにもかかわらず、それが「ない話」になってしまったのだ。日本軍が正しく、アメリカはひたすら悪だと教えられてきたのだ。当然、本土決戦になり奴隷にされるか殺されるか、負ければ悪が蔓延し「アメリカ兵が日本の男の睾丸をすべてちょん切って奴隷にし、日本の女をすべて強姦する」ことになるはずだった。が、それもどうやら「ない話」らしい。正しいものがどうして負けるのか、という少年の疑問は、一転して日本の戦争は侵略戦争だったことや、アメリカや民主主義の正しさを伝え聞くうちに棚上げにされる。疑問が解消しないのは大人たちが誰もあやまらないからだ。間違いだった嘘だったと言わないからだ。国家からも大人からも謝ってもらえないまま時代はどんどん新しくなっていく。年齢的にがちがちの皇国少年になることもなかった主人公は、ただ戸惑うだけだ。

 他にも縁故疎開先での苛酷な体験を描いた柏原兵三の「長い道」や軍国少年の敗戦をあつかう加賀乙彦の「帰らざる夏」など少年時代に敗戦を経験した人、国から大人たち全員から騙されたという決定的な経験をした人のものを読むと、自分とは何かが違うと思う。うまくいえないがすべてにおいて考える枠組みが違うのではあるまいか、それほどに衝撃的な体験なのではあるまいか。

 しかし今の時代の若い世代の状況もひどいものだ。オヤジたちのために食い物にされてる気がしないでもない。いつの時代も大人は子どもを騙すのかもしれない。そろそろ騙されてることに気付くべきなのかもしれない。

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