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現役書店員が週替わりでおすすめ本のご紹介します。


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堀江良文堂書店松戸店 高坂浩一

2006年12月21日

『その街の今は』
『その街の今は』

【 新潮社 】
柴崎 友香
1,260円(税込)
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  好きな作家の新刊が出る前ってワクワクしますよね?

本屋大賞にエントリーしている書店員にとって好きな作家が10月下旬から11月上旬に発売予定に載っていると尚更です。「読んでいないけど、1次投票には入れるぞ!!」なんて期待をして、入荷した本をチェックしたら奥付が12月1日で「今年は投票できないじゃん」なんて悲しい思いをする書店員もいるのではないでしょうか?

本屋大賞に投票云々は置いといて柴崎友香は私にとって新刊が出る前にワクワクする作家です。

盛り上がらなかった合コンの気晴らしに行ったクラブ。翌日二日酔いの頭でクラブでの事を思い出そうとするが思い出せないわたしは友人に聞くと隣にいた良太郎と意気投合して「付き合う宣言をした」らしいが記憶が無い。しかも携帯のメールに「仕事が終わったら会おう」というやり取りをした形跡が…という冒頭に柴崎友香がドラマチックな恋愛小説?と思ったらこの後は柴崎作品らしい話しの流れになっていきます。

柴崎作品の特徴である関西弁で交される友人やお店に来るお客さんとの何気ない会話。その会話から感じられる相手との距離感、そして日常のちょっとしたことを丁寧に描くことで作品に親近感を抱かせ「昨日、こんな事があったんだよね」と友人の話を聞いている感覚で読ませる文章を堪能する事ができます。

会社が倒産してカフェでアルバイトってことは前々作「フルタイムライフ」の続か?と思って主人公の名前を確認したら違ったので続きではありませんでした。しかし、柴崎作品を読んでいると主人公の雰囲気が似ているためか話が繋がっている感じがするんですよね。友人の引越しパーティーに集まる仲間たちのそれぞれの視点でその日の事を描いたデビュー作「きょうのできごと」の真紀。その真紀が、中沢と別れたショックで「エブリバディ・ラブズ・サンシャイン」(「次の街まで、きみはどんな歌をうたうの?」所収)のどこででも眠ってしまう工藤になり。そこから立ち直って就職し右も左もわからない新入社員が徐々に成長していく「フルタイムライフ」の春子に。そして、その会社が倒産してアルバイト生活をして「その街の今は」の歌ちゃんに繋がる流れを感じます。

彼女たちに共通する目立つ存在ではないけれど友達の多いちょっとお洒落な女性が醒めた視点(冷たいわけではありません)で描かれる作風と作品ごとに主人公の年齢が上がっていることがそう感じさせるんだと思います。

先日、某飲み会で炎の営業の方から「レッチリとか柴崎友香とか若者が好きそうなものが好きとか言って無理をするな」と言われました。確かに30代半ばの私が好きというのに無理があるかもしれませんが、本を読んでいる間だけでも現代の若者気分を味わったって良いではないか! という訳で中年男性にも読んで欲しい1冊です。

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