| ちょっとお塩が足りないみたい、くらいの感覚で、「あぁ、恋が足りない」と思った。昔は恋愛小説ばかり読んでいたけれど、最近めっきりご無沙汰だったのだ。自分が恋愛真っ只中だと、作中の誰かに自分を重ねて、心ゆくまで感情移入し、ちょっと気のきいた言い回しがあろうものなら、すぐさまそれを自分の恋へ二次使用といく所だが、人妻になった今、そんな予定はとんとない。そういえば、旦那と付き合い始めの頃「手紙書くのうまいなぁ」と言われたことがある。うまかったのは私ではなくどこぞの作家センセイだったわけで。今まで黙っててごめん。でも、10年も経ってたらもう時効でしょ?
で、どうして恋愛小説がご無沙汰だったのかというと、何のためらいもなく読もうと思った小池真理子をある日突然体が受け付けなくなっていたのだ。村山由佳もダメ。江國香織もダメ。その時、あぁ今私には恋愛小説は必要じゃないんだと愕然とした。体が(いや心か?)欲していない本を無理に摂取しても仕方ない。喉がかわくまで待とう。そう腹をくくってからもう2、3年は経っただろうか。ついに、その日が来た。
きっかけは、本屋大賞だった。二次投票をするには、ノミネート作品全てを読破しなければならず、私も未読本に取りかかっていた。『図書館戦争』有川浩著(メディアワークス)が面白いというのは大分前から聞こえていたし、読まなきゃいけないとは思っていたものの、電撃の冠が邪魔をして手を出せずにいた。だから、ノミネート作に入っているのを見た時に“これで読む理由ができた”とホッとしたのだ。結果的に、これが呼び水となった。『図書館戦争』は皆様ご存知のように、図書館の本を、そして活字の自由を守るために武装して戦っちゃうお話なのだが、主人公の女の子は、子供の頃に自分の本を守ってくれた王子様に憧れて入隊を決意する。その時のヒーローこそが、今自分をしごきまくる鬼教官なのだが、彼女はまだそれに気が付いていない。しかし彼は、彼女があの日の少女だということに気が付いている。無鉄砲でまっすぐな彼女を憎からず思っているのだ。キタ。きました! シークやボスに手を出すのは、恋愛をセミリタイヤしたみたいで女のプライドが許さない。BL畑もとっくの昔に卒業したのでそこにも活路を見いだせない。でもっ。でもあたし、有川浩なら今いけるかもしれないっ。
そして手にした『クジラの彼』(角川書店)。結論。イケました。だってかわいいんだもん。この本に出てくるヒロイン達は、膝上20cmの女子高生でもなく、巻き髪のOLでもなく、お国のために日夜働く自衛官である。あ、でも表題作は別。彼氏の方がクジラ乗り。(間違ってもイルカではないのであしからず)櫻井も御多分にもれず、この先潜水艦乗りの人と話す機会があったら、必ず「潜る」と言おうと心に決めました。彼女達の恋がどんな様子かというと
「あたしが自衛官なのは最初ッから分かってたべさ。筋肉ついてんのも腹筋割れてんのも普通に想像つくべさ。柔こい女がよかったら民間の女とつき合えばいいしょや。」
と前途多難な様子。筋肉が付いてたって、腹が割れてたって、女の子は女の子。恋したいよね。そりゃそうだよね。でもね、民間の柔こい女の代表として言わせてもらうと、君達の恋ってたまらなくかわいらしい。姉さんはきゅんきゅんしまくりでしたよ。(笑)
そしてあとがきを読んで、ワナにはめられたことに気がづいた。この短編集、ただの読み切りじゃなかったのです。既刊本のカップル達の番外編だったのです。これは読まねばなりません。しばらくは有川浩から足を洗えそうにないのです。
|