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堀江良文堂書店松戸店 高坂浩一

2006年3月15日

『谷根千の冒険』
『谷根千の冒険』

【 ちくま文庫 】
森まゆみ
756円(税込)
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 いやぁ〜今年の本屋大賞は苦労しました。何に苦労したって2次投票に残った10作品中7作品が未読で投票締め切りギリギリまで候補作を読み、慌てて投票するというドタバタ状態。「候補作を読み終えたら、あの新刊やこの新刊を読もう」なんて考えていたが、普段マッタリした読書しかしていない身に締め切りに追われながら読むというプレッシャーが響いたのか燃え尽き症候群になってしまい最近読む気が起こらないんですよね。

 さて、今回紹介する『谷根千の冒険』はそんな気の抜けた状態にカツを入れてくれる作品…というよりボーっとしている場合じゃないぞと思わせてくれる作品です。

 出版社勤務経験のある2人の主婦を含む4人の主婦が雑誌を作りたいという思いから集まる。どういった内容にするかを話合っていくうちに、自分たちの生活している谷中・根津・千駄木界隈の古い建物やお寺の歴史を紹介し住民や読者に興味を持ってもらい、ビルやマンションに建て替えられ変っていく町並みを少しでも残したい、残らないのであれば写真や記事にして残したいという町への思いをテーマに作っていこうと決まり、町中を取材し、出来上がった雑誌を自分たちで販売店に配達するといった奮闘する様が描かれています。

この「谷根千」、主婦が作っているんだなと感じさせるエピソードが随所に描かれています。特に出産や育児についてで、産院まで仕事の電話、病床で仕事の指示なんて事もやっています。さらに退院してからも事務所で育児をしながらの編集作業と想像しただけで大変そうです。そんな思をしても続けたいと思える楽しさが雑誌作りにはあるんでしょうね。経験が無いので想像ですが、雑誌が出来上がるまでの苦労って完成したときの満足感で忘れてしまう…というか苦労より満足感のほうが勝っているから続けてしまうんですよね。そういう感覚が羨ましくもあります。

さて、そんな大変な思いをしながら生まれてきた子供たち、創刊当時の4人が10人にまで増えているのです。その子供たちの成長していく様は『とびはねて町を行く「谷根千」10人の子育て』(集英社文庫)で読むことができます。特に巻末の10人の子どもたちの対談を読むと「あの時産まれた子が大きくなったんだなぁ」と近所の子供の成長を見ている様な感じになります。

この作品を初めて読んだ時「どこかで読んだような…」と考えていたら、“町”への愛を“本”に変えると本の雑誌の始まりからを描いた「本の雑誌血風録」に似ているんですね。「本の雑誌血風録」に描かれる若々しさは感じないものの共同作業の楽しさは共通しているのではないでしょうか。

そんな「谷中 根津 千駄木」2009年刊行予定の93号で休刊となってしまうようです。

本書を読んで興味をもたれた方は全国の書店で扱っている雑誌ではありませんがネットで購入もできますので、「谷根千」本誌も読んでみてくださいね。

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[男は敵、女はもっと敵 ][その街の今は ][階段途中のビッグ・ノイズ ][薄闇シルエット][谷根千の冒険]
 

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