あまりに好きだとうまくいかないこともある。
「二番目に好きなことを仕事にしなさい」という就職活動中の学生の格言だとか、「あまり興味のなかったジャンルを担当するほうが売り上げがとれた」という某書店人の回想とか、「彼のことが好きすぎてどこに行くでも一緒だったら重いって別れ話をされた」という某女性誌の恋愛特集であるとか。ほどほどに好きなほうが物事を客観的に見れるからいいよ、ということなのだろう。
私にとって伊坂幸太郎氏の作品はあまりに好きすぎて仕方ない、どうしよう!というもの。この良さをもっと伝えたいという情熱は負けないが、いざ言葉にしようとすると「アワワワ…、とにかく良いからとりあえず読みなさい」としか言えず、いつも歯痒い思いをしている。それに、『軽妙な語り口』だとか『伏線の妙・見事な構成力』とかすでに伊坂幸太郎と言えば的な評価では収まりきれない良さをどう言ったらいいのか以前から、いや今も悩んでいる。普段停止している脳ミソを活動させてこの良さを考えよう。
思考中−。
小説には核となる部分(いわゆるテーマ)があって、そのテーマを説明するにあたって様々な登場人物や、出来事がそのテーマの周りに張りめぐらせているね。まるで箱の中に球体があって割れないようにワタを詰めているような。箱や球体やワタにはグレードがあって、おおっと思うものほど出来がいい。(中にはそう見えるだけでとんでもないものだったりすることもあるけど。)箱をあけて、ワタを取り出してという作業をしていくうちに中身がひょっこり現れる。小説ってそんな感じ。
でも、伊坂作品はそういうのではなくて、仏師が仏様を彫りだす時のように、木片から必要な部分だけを削り取っていくような感じ。無駄がなくてシンプル。理系の友人が言った「数学の醍醐味はいかにシンプルな式で宇宙を表現するか、そしてその式こそ美しい」という言葉のような。
ああ、でもまだ良さを伝えきれない。あの言葉遊びも楽しくていいし、登場人物も面白い子がいっぱいいるし、でたらめな伝記を本当のことのように描くところも笑っちゃうし…。それよりもだってだって人によって好きな作品が違いすぎ、こんな作家がいるなんてことが信じられない。
で、『フィッシュストーリー』の紹介は?
良いからとりあえず読んでみてよ!私は『サクリファイス』が好き。
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