今年、個人的に嬉しいことに佐々木丸美作品の復刊開始がありました。
絶版になって久しいので知らない人も多いでしょう。佐々木丸美という作家はもう半ば伝説の作家になっていたと思います。
でもなんというか「佐々木丸美が好き」と他人に告げることは勇気がいるのです。もし言う時それは、告白に近いような感覚です。多分彼女を好きと告げることは、自分の心のやわらかいところ、隠しておきたい秘密をさらけだすことに似ているからだと思います。
でも私も大人になりました。今回「崖の館」を御紹介いたします。
私がこの本を知ったのはまだ高校生の頃、当時面白い本を教えあっていた友人から「私の理想の男子が出てくる」と真顔で渡されたのが最初。今考えると若いってなんだかおかしいですね。幸いなことに趣味が違っていたのか、彼女の言うところの理想男子哲史君ファンにはならなかったものの、その哀しく透きとおった世界にはどっぷりはまりました。
資産家のおばの家に集まったいとこたち。崖の上に立つこの館で二年前、千波ちゃんは命を落とした。美しく聡明なもう一人のいとこ。着いた当日から起こる怪しい事件・不思議な現象。犯人は誰なのか? 千波ちゃんの死は事故ではなかったのか? 雪に閉ざされた館で様々な思いが交錯する。
実はこの「崖の館」は“館”三部作の第一作目です。佐々木丸美にはその他に“孤児”四部作(他に良いシリーズ名はないだろうか)・“〜家の伝説”などがあります。どの物語も北海道を舞台に、記憶・輪廻・夭逝・超常現象・濃い血縁関係、そして少女と年長の男性という関係が繰り返し出てきます。
少女は繊細で純粋であるがゆえに頑なで。男は大人であるがゆえに優しいけれど心の奥底を見せることはなく、彼女たちは常に翻弄される。
作品同士は互いにリンクしていて、作用し合い影響しあい、一人の人間のとった行動が別の物語では悲劇をもたらしてしまう。
人は、罪を犯さずに生きていくことはできない。そうと知らずともどこかで誰かを傷つけているかもしれない。知りたくなかった自分の中の激情に気づいてしまうこともある。
その残酷なまでの真実、救われなさに、10代後半だった私は正直救われました。
もう大人になってしまった私には、ヒロインの詩のような独白など懐かしくも気恥ずかしい気持ちを呼び起こされたりもします。でも時代は変わってもあの頃と同じようにきっとどこかにいる傷つきやすく頑なな少女たちはいると思います。
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