最近、CMで80年代の洋楽が使われる事が多く「懐かしいなぁ。CMの製作者は世代が同じなんだろうな」などと思うことがある。
そんなCMソングの入ったアルバムがあったはずだぞと部屋を探すが見当たらない。しばし考え「そうだ、LPで持っているんだ」と思い出す。残念ながらレコードプレイヤーもLPも実家にあるので聴けないのが悔しい。CMで流れるフレーズの続きが聴きたいのに…そんな時に深夜の通販番組で「懐かしの洋楽セレクション」なんてCDの紹介をされると思わず申し込みたくなるのですが、不要な曲が多く結局買わないんですよね。
そんな話は置いといて奥田英朗最新刊「家日和」を紹介。
家庭をテーマにした6つの短編。登場人物たちが自分の身に降りかかるトラブルに対する危機感の無さが気になるものの奥田作品らしいちょっと毒の効いたユーモアで何となく解決してしまう作品になっています。
そのなかでも「家においでよ」は冒頭に書いた80年代に洋楽を夢中で聴いていた世代にはたまらない作品です。
38歳の平凡なサラリーマン田辺正春は妻仁美と別居する事になる。家を出る際、仁美がお気に入りの家具類を部屋から持ち出すと部屋はガランとした状態になった。正春は生活用品を揃えなければと休日に大型スーパーでいくつかの買い物をするが、慌て買う必用も無いと思い直し家具屋回りをして自分の好みの家具を買い揃え始める。
徐々に自分好みの部屋が出来上がってくると会社の同僚が遊びに来るようになり正春の部屋の居心地の良さに彼らは足繁く通うようになる。
もうこれは主人公と同世代の既婚者にとって憧れの生活ですね。
特に実家からLPを持ち出し、勢いでハイグレードなステレオセットを買ってしまう所は本気で羨ましく感じました。
実家にあるステレオやLPを持って来ようと妻に話すと「狭い部屋にステレオなんて入りません。ステレオを置けるぐらいの広い家を建ててから持ってきてください」なんて却下されたお父さんも多いのではないでしょうか?私も渋々諦めました。
そんな哀愁漂うお父さんたちの代弁者となってくれるのが正春の同僚酒井たちです。正春の思いっきりの良い買い物をする姿に妬みも込めた「ありえねぇ」というツッコミをいれつつ酒井の語る妻子持ちの実情に「そうそう現実はそうなんだよね」と納得してしまうのです。
そんな酒井たちが正春の部屋に入り浸ってしまう気持ちも良くわかるのです。あの部屋へ行くと高校時代居心地が良い友人宅に毎日のように行き、買ったばかりのCDを皆で聴いたり他愛も無い事をダラダラ話していた頃の雰囲気が甦ってくるんですよね。
特に104ページから106ページの正春と酒井が昔の洋楽の話で盛り上がるところなんて酒井が自分に思えてきました。いやぁ〜自分にも正春みたいな同僚が欲しい!!
そんな好き勝手な買い物をして自由な暮らしを始めた正春が妻仁美に電話をして復縁に向かう感じで終わるのはどうなんでしょう?最後の最後まで「羨ましい」という言葉しか思い浮かばない作品です。
最後に余計な事かもしれませんが、「サニーデイ」のネット・オークションにはまる紀子と「グレープフルーツ・モンスター」であらぬ妄想をしてしまう弘子と奥田氏自らがネタ元?と思わせる「妻と玄米御飯」の康夫の3人の歯車をもう少し悪いほうに動かしリンクさせて「邪魔」みたいな作品を書いて欲しかったなぁなんて思いました。
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