WEB本の雑誌 TOP
.
.
.
.
.
.
WEB本の雑誌ほんや横丁横丁カフェ

現役書店員が週替わりでおすすめ本のご紹介します。


バックナンバー  
今週のおすすめ
 
前へ 次へ  
堀江良文堂書店松戸店 高坂浩一

2006年6月21日

『電車屋赤城』
『電車屋赤城』

【角川書店】
山田深夜
1,890円(税込)
商品を購入するボタン
 >> Amazon.co.jp
 >> 本やタウン

 この表紙を見て浮かんできたのはくるりの名曲「赤い電車」。
以前、京急沿線に住んでいたこともあり「赤い電車」のPVで自分の暮らしていた街を何度もスロー再生をしながら探した事を思い出しました。

その曲の「赤い電車に乗っかって夢を探しに行くんだよ―♪」というフレーズをイメージしながらページをめくると京急=神奈電は繋がりますが、くるりの曲とはかけ離れた作品でした。

 川崎〜三崎をつなぐ私鉄神奈川電鉄(通称神奈電)の車両整備をする神奈川電鉄横須賀工場。4年間引きもり状態の純一は伯父から自分の経営している神奈川電鉄横須賀工場の下請け会社「エース工業」で働かないかと誘われ不安はあるものの引きこもりから抜け出す一歩を踏み出す。神奈電の運転士に憧れるも学生時代に野球のボールを目に当ててしまい視力が落ち運転士を諦め車両部へ配属になる佐島。親の会社を継ぐも下請けの立場に苦しむエース工業社長の三郎。夫婦で漁に出ていたが、大型船との接触事故により妻を亡くし神奈電に入社した原口。妾の子として生まれ、母が勤めていた神奈電に自分たちを捨てた男がいると神奈電に入社する加藤。

この作品のタイトルになっている赤城について書かれた話しは無く先に書いた人物とのエピソードから赤城の人物像が浮かび上がってくる。

 無口で人付き合いが下手で時に誤解を招く事もあるが困った事が起こるとさり気なく手を差し伸べる。その加減が絶妙で思わず「じ〜ん」とさせられるんですよね。に第2章トレイン・ブルース、5章のハマボウの赤城の配慮に涙腺が決壊寸前でした。

そんな涙腺を刺激するエピソードが各章に入っているのですが、その話に彼らの愛する人や大切な人の死が絡んでいるのがチョット気になりました。確かに人の死によって人物の深みが増すという事はありますが、それにしてもチョット多いのではないでしょうか?

さらに赤城が名ブルースギタープレイヤーという設定も気になりました。

作中で語られる赤城から察するにブルースを聴き独学でギターやハーモニカを練習し上手くなったという事なんだと思います。しかし、アメリカ兵が集まる外人バーで1人ライヴをやるというイメージは浮かばないんですよね。演奏はプロ級でも決して人前では演奏しないという感じだと思ったのですが…これって作者の趣味なのかな?

そんな事は置いといて、この作品に出てくる男たちは悲しみを背負いながらもひたむきに仕事をする。30年前に設計された1000形から最新型の3000形に車両が変わるように、車両整備士も赤城たちから純一や加藤たちに変わっていくが、仕事に対する思いやひたむきさは受け継がれる。まさに男が惚れる男がいる職場。書店ではなかなか味わえないそんな雰囲気がちょっと羨ましくなりました。

前へ 次へ  

[男は敵、女はもっと敵 ][その街の今は ][階段途中のビッグ・ノイズ ][薄闇シルエット][谷根千の冒険][あなたがパラダイス][家日和][電車屋赤城]
 

WEB本の雑誌ほんや横丁横丁カフェ

| 当サイトについて | プライバシーポリシー | 著作権 | インフォメーション | サイトマップ | お問い合せ |

Copyright(C) 1999-2008 本の雑誌/博報堂 All Rights Reserved