おそらくお嬢様方は史緒さんの中に自分達とは違う「何か」を見たのであろう。「何か」とゆーのはこの場合「お育ちの違い」の事である。 『笑う大天使』より
第1章を読んで最初に連想したのが川原泉のこの作品だった。それから吉田秋生の『櫻の園』や萩尾望都『トーマの心臓』、吉野朔美『少年は荒野をめざす』とか。全部漫画ですね。
さて本題。今回の桜庭一樹の新刊も傑作ですよ。もう超面白いっす。モロ好み、ストライクゾーンど真ん中。いやー読んでいる間中なんてゾクゾクと幸せだったことか。この面白さをわからない人とはきっと魂は分かち合えないでしょうな。
“桜庭版・百年の孤独”と銘打って、山の手にあるミッション系お嬢様学校を舞台に彼女が描くのは、本流から外れた異端児だけが集まる「読書クラブ」によって記された100年にわたる暗黒の学園史。“烏丸紅子偽王子事件”、学園の創始者である“聖マリアナ失踪事件”、既成概念の破壊と挫折“生徒会六本木化事件”、血に眠る愛と堕落と幻惑による“ルビー・ザ・スター事件”、そして現代の紅はこべともいえる“ブーゲンビリアの君事件”。どうです? どきどきしませんかね、黒乙女たちよ。
学園に流れ着いた異端の彼女らは決して自らが主人公になることはない。遠くから時には裏側から、ここで起こった出来事を眺め書き綴っていく、様々な時代の様々な個性の、けれどコードネームのみの名もなき部員たち。
100年の間、箱庭の時計の針は止まっていても、外の世界では確実に時は過ぎている。生身ではない青年性の象徴である王子に熱狂した少女たちもやがて卒業し、そしてまた新たなる乙女たちに混じって異端の者が入学してくる。時は巻き戻せなくても、そうやって学園の地中深くに潜む地下水脈を、形を変えて後から後から寂しく孤独で潔い、自由な魂が流れてくるのだと。ユーモアとしたたかさで論理武装しながら脈々と受け継がれてきたものがあるのだと。薄い紅茶をすすりつつ、ガラクタと埃と好きな本に囲まれながらいつか気づくのだ。
ところで『1999年の夏休み』という映画を御存知でしょうか? まだ10代の深津絵里らが少年に扮し、自殺した友人をめぐっての心の葛藤が描かれています。学生の頃これにハマった友人たちがおりまして、毎日放課後になると人気のない教室で脚本の読み合わせに付き合わされたものです。それは結構長く続きましたねぇ。観客のいない教室で、男装の美少女たちが演じた映画を再演してみせる少女たち。
この小説を読んで、そんなイケナイ匂いのする秘密の思い出がこっそり蘇ってきました。
2007年度 文責<千輪の紅椿>
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