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現役書店員が週替わりでおすすめ本のご紹介します。


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紀伊國屋書店新宿本店/平野千恵子さん

2007年7月19日

『建てて、いい?』
『建てて、いい?』

【 講談社 】
中島たい子
1,365円(税込)
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「家が欲しい」アパートで生活している人ならそう考えた事がありますよね?既に結婚している人なら尚更ですよね。
新聞広告の物件情報の間取りを見て「ここが書斎で、寝室は…」なんて想像するのが楽しかったのが良い物件を見付けると本当に欲しくなる。そんな気に入った物件の煽りに「月々○○万円のお支払いで家が持てます!」なんて大きく書いてあって「コレなら今の家賃にチョット足せば買えるかも」と期待をして良く見るとボーナス払いの金額が高くて「やっぱり無理か」と諦めるなんて悲しい思いをした事ありません?
この作品は欲しいと思ってもなかなか買う事のできない家を独身女性が建ててしまうお話。

 主人公の真里(35歳)は従妹の有紀子が立ち上げた輸入雑貨の通販会社で働いている。
「そろそろ結婚相手を探そうと思う」と有紀子に話した事がきっかけで合コンの席を設けてもらうがイマイチ乗らない。
合コンがダメならと抜き打ちでお見合いをセッティングするが真理も相手の男性もその気が無い。その事がわかると逆に気楽に話す事ができるようになり、真理は現在の状況を彼に話すと「要は、居場所が欲しいんですね」と言われる。その言葉をきっかけに自分の家を建てるという方向に徐々に向かっていく…

 この作品の魅力は主人公真理の平凡さだと思います。
カフェで横に座った男性とちょっとしたきっかけで話をしてしまう妄想をするシーンや随所で描かれる会話のシーン、特に家を建てたいと両親に話すシーンと建築家の福島とどんな家を建てたいかを話をしているシーンはニヤリとしてしまいました。
そんなチョットしたエピソードから垣間見える真里は平凡な女性ながら魅力的に感じます。
チョット気になったのが、お金の問題です。土地を親から譲り受けているので、上物の費用だけとはいえ何らかの賞を取った設計士に設計を依頼しているのだから費用も高いと思われます。そのお金を銀行から借りる時のやり取りも描いて欲しかったなぁ。
だって勤続年数4年の独身女性ですよ。借りれるのか?って思いません?
実際に家を買いたいけど銀行の審査が通らず断念なんて話もあるぐらいですから、気になるところですよね。まぁ貯金がいっぱいあって借りる金額が少なく済んだのかも知れませんが、そういった話も描いて欲しいと思いました。

あと、建築中のエピソードも描いて欲しかったですね。窓の位置が設計図と違うとかクロスの色がイメージと違うといったトラブルを描いても良かったのでは?
そこら辺の話しは作者が違いますが「くうねるところすむところ」平安寿子著で描かれていますので、本書と合わせて読むと面白いかも知れませんよ。
本書を読むと、結婚によってではなく家を建てる事で居場所を得る女性がこれから増えていくのかなぁって思わせる作品でした。
しかし、こういう作品を読むと女性の逞しさを改めて感じますね。男性も頑張らねば!
そうそう、同時収録の「彼の宅急便」も短いながら素晴らしい作品です。特にオチが気に入りました。

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