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堀江良文堂書店/高坂浩一さん

2007年9月20日

『渾身』
『渾身』

【 集英社 】
川上健一
1,680円(税込)
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 最近、歳のせいか涙腺が弱くなっているような気がする。子供たちと毎週日曜の朝に見ている『仮面ライダー電王』でジ〜ンとしたり、休憩中に売り場をフラフラしている時に『キャプテン』の1巻を目にして「谷口くんが父ちゃんと神社の境内で特訓しているシーン。そして前キャプテンがその陰の努力に気付き次のキャプテンに任命する所は何度読んでもも泣けるんだよなぁ」なんて思い出しただけでジ〜ンとしてしまったりする。

 さて、『仮面ライダー電王』は関係ないが『キャプテン』のような昭和の薫り漂うスポーツ小説に家族の絆という要素も入っている『渾身』は久々に人前で読んではいけないと思った作品です。 

 坂本英明は婚約者がいながら麻里と恋に落ち結婚する。小さい島ではこういったスキャンダルすぐに広まり、周りから冷ややかな目で見られる。それでも逃げず島に残り自分たちを認めてもらうために相撲を始める。そんな英明と麻里は女の子(琴世)をもうけるが程無く麻里が病床に臥す。その看病に訪れる麻里の親友多美子は麻里が亡くなった後も琴世の世話のために足繁く通うようになり、多美子と英明は惹かれ合い結婚する。その4ヵ月後、20年に1度行われる伝統ある古典相撲の最高位正三大関(横綱はいないそうです)に選ばれる。正三大関に選ばれるという事は地域に人々に強さは勿論人柄も認められたという事である。英明はその信頼に答えるべく大一番に挑むのであった。
 小さい琴世を不憫に思い世話をするようになった多美子は、気が付くと英明にも好意を抱くようになる。亡くなった親友の夫と自制をする多美子が、不意に発してしまった一言から結婚に至るくだり。さらに、直向に相撲に打ち込む英明が正三大関に選ばれるくだりなど前半から泣きのツボを見事に衝いた話になっている。
 そして大一番の英明の取り組みのシーンであるが、非常に白熱した取り組みになっている。
取り組み前半こそすかし技が入るが、徐々に力と力の真っ向勝負になっていく。そんな体と体をぶつけ合う熱い戦い、それを見守る者たちの盛り上がりを臨場感たっぷりに味わう事ができる。この勝負を過去の大相撲の取り組みで例えると…と言いたいところだが、相撲を見ない私には思い浮かばない。なので、プロレスで例たとえさせていただくと、東京ドームの小橋健太vs.佐々木健介戦の約40分間続いたチョップ合戦(2人合わせて200発以上)を思い出した。どちらの戦いも妥協を許さない男たちの意地の張り合いに熱くなってしまった。とはいえ40分間ひたすらチョップの応酬にしても、本書の取り直しや水入りの多さにもちょっとクドイさを感じたりもする。
 そんな熱い取り組みの最中にも絶縁状態になっていた英明、麻里そして多美子の両親たちの再会や琴世が多美子のことを再婚前から呼んでいる「あのねえちゃん」から「お母ちゃん」に変るシーンなどホロリとさせる場面が随所に散りばめられている。
困難を乗り越えるために黙々と頑張る人たちが報われる様は、涙と共に心を潤してくれると思います。
こういう素朴で真直ぐな気持ちを描いた作品を20代の自分なら「泣かせ小説家かよ!」なんて斜に構えてしまうんだろうが、今なら、素直にジ〜ンとすることができる。これは「歳を取って良かった」と感じられる数少ない瞬間だと思う。

 でも、この作品の良さがわかる20代に戻れるならもっと良いんだけどね。

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[男は敵、女はもっと敵 ][その街の今は ][階段途中のビッグ・ノイズ ][薄闇シルエット][谷根千の冒険][あなたがパラダイス][家日和][電車屋赤城][建てて、いい?][怪獣記][渾身]
 

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