豪邸に姉と叔父と暮らす少女メリキャット。彼女たちは過去にあった毒殺事件の生き残りの3人だ。町に買い物に行くのはメリキャットの役目。町の人たちは凄惨な事件の悪い噂があり、裕福なメリキャットたちをとても嫌っていて、いつもいじめらている。なんて可哀想なメリキャット。でも、屋敷の中での生活は快適だ。姉のコンスタンスは家事などが大好きで、メリキャットの面倒をよく見るし、車椅子の叔父との関係も良好だ。彼女たちはいかにも幸せそうにみえる。
だが、彼女たちの幸せな様子を読んでいても違和感が頭から離れない。自ら考えたおまじないの儀式など、独自の世界観に生きているメリキャットの奇行の数々。叔父は毒殺事件の手記を書き上げるための確認だとして、あの日のできごとを、ところかまわず延々と話している。そして、そんな二人のことを変わっているとも思わず、かいがいしく面倒をみるコンスタンス。彼女たちが幸せだからいいのだと納得しつつも、一緒に住むには厳しいとしか思えない3人の立ち振る舞い。
物語は屋敷に従兄が登場することによって動きだす。外部の人間によって、屋敷のなかの閉じられた世界のルールが失われ、外の世界のルールに侵食されていくようだ。まるで今までの幸せは魔法によって作り出されていた幻かのごとく、どんどん色褪せていく。メリキャットの一人称で描かれたこの物語は、もしかしてメリキャットによって作られた物語かも知れない。現実の世界とメリキャットの見ている世界は違うのではないか、という不安感がつきまとう。盲目的でなければ幸福になることなどできないと何かの本で読んだことがある。現実を捻じ曲げてしまうのが魔法であるならば、幸福と魔法は近いのかも知れない。
それにしても、なんて嫌な人間ばかりでてくる小説なのだろう。ぞわぞわとした不快感を心の奥に残していく。人には薦めづらいけど、読んだ人とは話が盛り上がることは間違いない小説だ。
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