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紀伊國屋書店松戸伊勢丹店/平野千恵子さん

2007年12月13日

『ゴールデンスランバー』
『ゴールデンスランバー』

【 新潮社 】
伊坂 幸太郎
1,680円(税込)
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待ってました、二年振りの伊坂幸太郎書下ろし作品です。

首相公選制が存在する日本。連続殺人犯を捕まえるために街中にセキュリティ・ポッドという個人情報を収集記録する装置が設置されている国。それをどこかおかしいと感じながらも自分とは関係ない、仕方ないと受け入れている国民。
当選したばかりの若い首相が凱旋先の故郷仙台で爆殺されるところから物語は始まる。
翌日には一人の男が犯人として特定。青柳雅春。以前とある事件からヒーローに祭り上げられたことのある彼に降りかかる身に覚えのない行動、証拠映像、証言、過熱する報道。首相暗殺の濡れ衣を着せられた男は無実を証明できるのか。

というのが簡単なあらすじなのですが、うーん、おもしろく紹介できてませんね、すみません。見事な伏線とか洒落た会話とか無駄のない構成とか、伊坂さんならではの魅力はあらすじだけで伝えるのは無理です。さらに一番難しいのはその物語世界を作り上げている独特の空気感なのです。
こんなに切迫した絶望的に見える状況にあっても、その世界に漂うユーモア。その下で何が起こっていても空はどこまでも青いというやりきれなさと清々しさ。だけどこの重力で縛られた身体を忘れて意思の力で浮かんでみせようとする哀しさをはらんだ軽さ。考えて生きて考えて生き抜いていくことへの肯定。

首相選のある日本というと、伊坂作品では先に『魔王』でも私たちの知っている国とは少し違う、でも実はそんなに違わないんじゃないかという日本を描いています。と書くと“この閉塞した日本に対する警告の書”みたいな印象がありますが、どちらも自分・個人に置き換えて考えられる、圧倒的なの面白さと力強さを持っています。

ハリウッド的娯楽作品なら最後に主人公が身の潔白を晴らして大団円、なのでしょうが、果たしてこの物語はどこに着地するのか最後まで目が離せません。どうか青柳くんと一緒に逃げてください。
どう考えても勝てそうにない彼を追い詰める顔の見えない、きちんとした理由すら必要としていない巨大な悪意に対して、彼が持っているのは個と個のつながりだけ。今はそれぞれ生きているけど、若い日々を共に過ごした、彼を直接知っているという信頼と思い出だけ。

「だと思った。」この一言に私の胸もぎゅっと絞られました。

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