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児玉憲宗 氏
4/7
「32歳ガン漂流 エヴォリューション」


【 牧野出版 】
奥山貴宏 著
1,680円(税込)
32歳ガン漂流 エヴォリューション
体調を崩し、入院したら、ガンだった。
『31歳ガン漂流』(ポプラ社)は、前代未聞の闘病日記だった。余命2年の宣告を受け、奥山貴宏さんは、まるでそれが生きている証(あかし)であるかのように文章を書き続ける。

それから1年。続編である『32歳ガン漂流 エヴォリューション』が刊行された。冒頭で、いきなり脳への転移が発覚する。病気は悪化と衰弱の一途を辿っている。
恐怖や倦怠感を伴う治療や副作用、点滴ノイローゼだけが闘う相手ではなく、同室の迷惑な患者や、注射が思い切り下手な看護師も悩みのタネだ。彼らの存在は寿命を縮めるストレスの源か、はたまた精気を奮い起こすエネルギー源か。奥山さんは怒ると文章がますます冴える。

自分の命は自分しか守れない。いろんな場面でどんな選択をするかは重大だ。だから、治療や輸血の知識、セカンド・オピニオンなどの制度についても当然勉強し、情報収集を怠らない。「生きるということ」も病気にならなければ考えなかっただろう。奥山さんが、映画「ゴッドファーザー」の登場人物が口にした「病気のせいで利口になった」というセリフに共感している。『31歳ガン漂流』では見られなかった冷静さを生み出した「答え」が、生きようとする断固たる意志として日記の端々で輝いている。

池田清彦さんが著書『やがて消えゆく我が身なら』(角川書店)でこう言っている。「有限の命であればこそ、今日どれだけ楽しかったかは意義あるものとなる」と。奥山さんもそれを実感して、意義ある生き方を自覚し、何かを残そうとしている。それは、この『ガンエヴォ』であり、もう少しすると刊行される小説なのだ。なぜなら彼は文章を書くことを生業としたプロのライターだからだ。

最後に、わたしがこのような感想を持った背景について少し補足しておきたい。奥山さん流の表現をすると、わたしにとってのA.D元年は、ちょうど6年前。脊髄に発覚した悪性リンパ腫の摘出手術を受け、その瞬間から下半身の神経を奪われた。それ以降も再発、転移を繰り返し、その都度、抗がん剤や放射線治療で退治してきた。わたしは奥山さんのように余命何年という宣告をされていないし、まだ生きる気満々だ。もっともっと生きて、奥山さんの『ガン漂流』シリーズを読み続けたいと考えている。


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