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児玉憲宗 氏
5/2
「むかしのはなし』

【 幻冬舎 】
三浦しをん 著
1,575(税込)
むかしのはなし
「永遠に続くかと思われた日常のなかに非日常性が忍び入ってきたとき、その出来事や体験について、だれかに語り伝えたくなる」と、三浦しをんさんは、あとがきにこう書いているのだが、この『むかしのはなし』に収められた七編は、いずれも「地球が三ヵ月後に大きな隕石と衝突し、滅亡してしまう」という設定のなかで繰り広げられている。まさに永遠に続くはずの日常が途絶えそうになった上での出来事を、いろいろな人がいろいろな方法で語り伝えている。

しをん版『むかしのはなし』は、日本に語り伝えられてきた「むかしばなし」を現代風にアレンジした作品だ。サル、犬やカメだって登場する。しかし、よく考えてみれば、「むかしばなし」は、その時代の都合によって、内容や表現が書き変えられているはずだから、アレンジというより書き変えられていった挙句の果てとして読んだ方が正しい気もする。おじいさんが竹やぶで竹を切るより、ヤクザの愛人がホストに貢ぐ方がリアルだし。
ホストばかりか、ストーカーや空き巣狙いやロリコンや整形マニアなど、奇人変人のオンパレードの作品集だが、いかなる俗物の人生さえ、三浦しをんさんの手によれば、せつなくやさしいメルヘンに変わってしまうのだからスゴイ。

別々の物語として楽しんでいたはずなのに、実は、登場人物などがつながった連作であることに気づく。おお、『私が語りはじめた彼は』(新潮社)みたいだ。いや、むしろ、伊坂幸太郎さん自身が「短編集のふりをした長編小説」と呼んだ『チルドレン』(講談社)の方があっているかも。とにかく、三浦しをんさんが描く物語の、凝りに凝った構成にはいつも感心させられる。

魅力的なキャラクター、さわやかな文章、スリリングな展開。三浦しをん作品は決して期待を裏切らない。そして毎度、唸らされる構成力は、わたしたちの期待を「上まわる」という形で裏切るのだ。
「三浦しをん的」というオリジナリティを持ち、独特な楽しみを与えてくれる作家がいることを、わたしたちは語り伝えずにはいられない。


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