5年前、「動機」「陰の季節」を続けて読んだ時の興奮は忘れない。松本清張全集を読み尽くしていた当時の私は、平成の清張が遂に登場!と鼻息を荒くした。この作家の本は一生読み続けていこうと、その時決心した。
2年前、「クライマーズ・ハイ」を読んだ時の感動は忘れない。この作家の本を読み続けてきて本当によかったと心の底から思った。と同時に、これ以上のものをこれから先、横山秀夫は書くことができるのだろうかと不安にもなった。それほどの傑作だと思った。
そして今、「震度0」を読み終えた。信じてあげなくてごめんよ、ヒデオ〜(←ものすごく無礼)と土下座したい気分だ。これは「クライマーズ・ハイ」に引けを取らない傑作と言っていい。
阪神大震災が起きたまさにその日、600km離れたN県警の警務課長が失踪した。震災で露呈した大地の脆さと警察組織の脆さが見事に絡み合って、タイトルの秀逸さに痺れてしまった(「震度0」なのに「激震」)。
この事件をめぐって繰り広げられる、本部長、警務部長、刑事部長らの心理合戦が本書の核となる部分である。この登場人物たちの人物造型が実に巧い(「第三の時効」を彷彿させる)。それぞれの思惑が交錯する会議の場面は、自分もその場にいるかのような臨場感に溢れていた。
「ゴクリと唾を飲み下す音が耳に入った。倉本か。間宮か。」―スミマセン、私です、と手を挙げて名乗り出たくなったほどだ。
横山秀夫の描く警察小説がなぜこんなに面白いのかというと、出世競争、情報戦、キャリア対ノンキャリアの構図云々といった事柄が、どの組織にも多かれ少なかれ通じることだからだ。人間が集まれば必ず生じる宿命的な嫌らしさのようなものに横山秀夫はしかと目を据えている。600km離れた場所で大災害が起きて苦しんでいる人たちがいたとしても、結局自分の保身や野心の方が大事、という人間の本性を嫌というほど突きつけられた。
だが、最後まで読むと、救われるのだ。人間は信じるに値するという希望を持たせてくれるのだ。だから横山作品が好きだ。これを甘いと評する方もいるかもしれない。だが私は、人間を信じようとする著者の姿勢に大いに共感する。
「震度0」を読んで、あらためてこの作家を読み続けてきてよかったと思った。
あらためて、この作家の本は一生読み続けていこうと心に誓った。
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