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4月13日(日)

 子どもを連れて府中市郷土の森公園のプラネタリウムへ行く。一度来て、ハマり、今回二度目。産経新聞で書いているサブカルに関する連載で書くつもりで、取材も兼ねて。
 今まで、プラネタリウムなんざしゃらくさいと思っていたが、最近は星を見せるだけでなく、全天スクリーンでCG映像を見せるので、それがリアルで癖になりそうである。ああっ、飛んでる飛んでる、って本当に宇宙を旅しているような感覚。遊園地によくある、スクリーンの前で椅子が動くライドなんかよりはるかにリアルだ。
「ねえ、これホントに動いてんの?」と息子。
「一回動いたよね」と娘。
「ああ。今度これに乗って大阪帰ろう」
「え、これで帰れんの?」
「……」
「ねえ、これでホントに帰れんの? ねえ」
 言ってみただけだ。聞き流せ、息子よ。
   
 帰りに、息子がどうしてもボウリングしたいとごねるので、1ゲームだけやることにする。ボウリング場内に入った瞬間、場内にカコーン、カコーンという音が響いていて、虚しい気分になる。なぜカコーンが虚しいのか考えるに、あの景気のいい乾いたカコーンは本当は大空が似合うのに、窓もない屋内に閉じこもっているからではないか。
 大空に届かぬカコーン。

4月14日(月)

 ラジオの収録で自由が丘へ。
 約束より1時間半ぐらい早く、スタジオ前に着き、まさか今から入っても迷惑だろうから、自由が丘を歩く。
 午後に何かひとつ予定が入ると、その日一日仕事する気がなくなってしまうのは私の悪い癖で、かといって何か他にしたいこともないから、途中寄り道しながらだらだら行くつもりでさっさと家を出たはいいんだけど、とくに寄り道したい所が見つからないまま、超前倒しで現地着。ということが多々ある。
 自由が丘には、初めてかもしれないので、散策しがいがあると思ってきてみたが、建物ばかりで見るところがなかった。こんなに込み入ってて空が小さくては、住んでる人もきついだろう。なんて、くさしながらも、清潔でのんびりできそうなカフェがあれば、それはそれで入ってみたくもあり、うろうろする。だが結局、九品仏の浄真寺参道ベンチで、コンビニで買ったペットボトルを飲んでカフェのかわりにする。こういうことも多々ある。
 ラジオは、バイオリニストの葉加瀬太郎氏の番組にゲスト出演。
 葉加瀬氏は、私の本を読んでくれていた。以前有名な芸能人のラジオに出たとき、まったく読んでないのがその話ぶりからわかってしまい、しかも会話もいかにも仕事だから話しているのが感じられて、グレそうになったことがあったが、葉加瀬氏は私の話に、くだらねえー、なんて笑いながらツッコんでくれて、感激である。おかげで話はますますくだらない方へ流れ、充実した。
 年をきくと自分より下だった。意表。貫禄で全然負けている。
 考えてみると、これまで貫禄で誰かに勝ったことなど一度もない自分なのだった。

4月15日(火)

 朝日新聞夕刊に高野秀行さんと連載している往復書簡の原稿書き。締め切りはまだ一ヶ月ぐらい先だが、短期連載なので、さっさと全部書き上げてしまおうという魂胆。

4月16日(水)

 午前中は、持病のため定期的に通っているかかりつけの病院へ。
 ついでに少し寄り道して、南阿佐ヶ谷の書原へ行ってみる。むかし阿佐ヶ谷に住んでいたことがあり、当時何度も通った本屋である。こだわりのある本を多く置いているので気に入っている。
『西国坂東観音霊場記』金指正三校註(青蛙房)を買った。最近、寺や神社の縁起話が気になっていて、これは西国と坂東の三十三観音霊場の縁起が全部載っているという、まさにそのものズバリの本。
 縁起話が気になるようになったのは、三年ぐらい前、大阪岸和田の蛸地蔵で、すごい縁起絵巻を見せてもらったのがきっかけだ。それは、海から現れた蛸の軍団が、墨を光線のように吐きながら雑賀衆と戦うという冗談みたいな内容で、そのSF的馬鹿馬鹿しさにしびれたのだった。考えてみれば、国宝の「信貴山縁起絵巻」でも、鉢が米俵を乗せてUFOみたいに空を飛んだりしており、国宝→UFOという落差に心打たれる。私はそういう権威のあるもののなかに混じる腰砕けなものに惹かれるという込み入った嗜好がある。ひまなときにこの本をチビチビ読んで、突拍子もない話を探そうと思う。
 午後は散髪。美容師さんの話によると、白髪はたいてい右側に多く生えるそうだ。理由はわからないけれど、経験上統計的にどうしてもそうなのらしい。利き腕か何かの影響だろうか。今後人に会うときは、なるべく左側から接近しようと思う。
 その後また、近くの本屋で本を買う。総額で一万円越えれば無料で郵送してくれると思い込んで、この際だからとドカドカ購入したところ、無料なのは一万五千円からと言われ、今さら五千円買い足すのもしゃくで、泣く泣く重たい本を持って帰った。
 買ったのは、『ヨーロッパをさすらう異形の物語(上・下)』サビン・バリング=グールド著(柏書房)など。

4月17日(木)

 寝坊。朝起きて、めし食って、いざ仕事場へ出かけようとして、マンションの前で幼稚園バスから降りてくる息子と娘に出くわす。他の子のお母さんに、今からお出かけですか、とうらやましがられる。いや、うらやましがられたのではないのか。
 仕事場について、小説書き。
 突然携帯が鳴って起こされる。
 いつの間にか寝ていた。
 電話はいつもお世話になっている某雑誌の編集長ジョン・カーターさんからで、朝日新聞に連載中の往復書簡の感想。もっと弾けたほうがいい、とアドバイスをいただく。ジョン・カーターさんはいつも私を気にかけてくれてありがたい。と同時に、ちょっと凹む。
 自宅に戻ってから妻に、ジョン・カーターさんにおとなしすぎるって言われたよ、と報告すると、妻にも、わたしも読んでそう思ったとダメ押しのように言われ、ますます凹む。ジョン・カーターさんの段階では、よし次はがんばろうという気持ちだったのが、夕方には暗黒星雲に覆われたような気持ちに。

4月18日(金)

 往復書簡、書き直し。
 娘が、はやくも幼稚園バスの中でよその子を泣かせた。一緒に通園している息子によると、「○○ちゃんの鼻の穴に指突っ込んだ」とのこと。ウケると思ったらしい。
 娘は、性格がおてんばというか、天真爛漫というか、まあかわいく言えばそうなのだけど、実体はそういう純真無垢な感じというより、ウケを狙うタイプであって、家でもよく変な顔をあれこれ試したり、おちんちんナントカ! とか叫んだりしている。たぶん鼻の穴に指突っ込んだのは、彼女なりのサービスだったはずだが、○○ちゃんには理解されなかったのだろう。

4月19日(土)

 息子のサッカースクールを見学にいく。
 自分からスクールに通いたいと言ったくせに、息子は溌剌と楽しんでいるように見えなかった。なんとなく取り残されているようでもある。友だちのH君やT君はコーチに筋がいいなどとほめられていたが、息子は何も言われなかった。
 シュートをはずしては天を仰ぎ、ああ、もういいや、どうだって、とふてくされた態度で歩く姿を見ていると、うりゃあ、もっと本気でぶつかっていかんかい! と男親として苛立つけれど、なんだか息子にすまないという気持ちも同時に湧いてくる。
 息子はサッカーがしたいんじゃない。ただ友だちと走り回りたかっただけなのだ。そしてそれができる場所が、サッカースクールしかなかったのである。
 これまでの人生で一番楽しかったのは、友だちと近所のドブで遊んだこと、と息子は妻に言ったそうだ。家族旅行で海とかキャンプにも連れていったのにドブかよ、と思うものの、自然のなかで友だちと無茶苦茶したいという気持ちが満たされたのは、きっとそのドブだけだったのだろう。
 そのあと妻はまたドブへ連れて行ったようだが、ほかの子たちはみな二度とだめと言われたらしく、二度目のドブに入ったのは息子ひとりだったという。物足りなく、虚しかったにちがいない。
 そんなことを思いながら、ずっと息子のシュートを見ていた。

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