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8月24日(日)

『アカペラ』
山本 文緒
新潮社
1,470円(税込)
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 雨が降り続き、まだ8月なのに秋の涼しさ。
 季節が前倒しになっているのか。しかし雨が降っているのは東日本だけらしい。帰省したりオリンピックを観たりして、すっかりチェックし忘れていたが、気がつくと四国の早明浦ダムが渇水になっている。貯水率10%を切ったようだ。ダムの水位好きの私としては、しばらく早明浦ダムから目が離せなくなった。
 山本文緒『アカペラ』(新潮社)を読む。これも『WEB本の雑誌』の「帰ってきた炎の営業日誌」で絶賛されていたもの。ちょうどこの日記を書きはじめた頃に山本文緒のうつ病の日記『再婚生活』(角川書店)を読んでおり、そのうつから復帰して最初の作品というので読んでみたくなったのである。「人生がきらきらしないように、明日に期待しすぎないように、生きている彼らのために」という帯のフレーズも魅力的。うつからの復帰作に、地味に生きている市井の人々を描いているのは、かつて作者自身がそうした人々に対して心のどこかで優越感を抱いていてその贖罪のために書いたのでは、と思わせなくもない。うがった見方かもしれないが。
 全然関係ないけど、ふと、堺雅人の正体は太川陽介ではないか、という疑念が脳裏をよぎった。

8月25日(月)

 オリンピックをふり返るニュースがあるたびに、陸上男子400リレーを見ては泣く。レース後の末續選手のコメントを聞いてまた泣く。阿呆のようにくりかえし泣きつつ、掃除。今日は、家族が帰省先から戻ってくる。なぜかはわからんが、お父さんはがんばったぞ、と偉そうな気持ちなのは、たぶん自分が銅メダルを取った気分なのであろう。本当にちょっと阿呆になっている。
 オリンピックが終わって、阿呆になっている(尾崎放哉)←ウソ

8月26日(火)

 アマゾンで8000円も出して購入したバーバラ・M・スタフォード『実体への旅』(産業図書)を読みはじめたのだが、研究書だけに文章がまどろっこしくて中途で挫折。これを次の書評連載のネタに思っていたので、あてがはずれてしまった。
 ところで、先日高野さんに聞いたのだが、本の雑誌のニック・ステファノスさんは、野菜が食べられないそうである。驚いた。そんなのは中田やイチロー、それにうちの娘だけかと思っていた。しかも、本人に確認したところ、さらに生魚も乳製品も食べられないという。いったい何を食べて生きているのだろうか。本と雑誌かな。
 聞くところによれば、人間の体は欠乏にはわりと強いらしい。逆に過剰摂取には弱いのだそうだ。過ぎたるは及ばざるに及ばざる、というわけである。

8月27日(水)

 久々に少しだけ晴れ間がのぞく。
 たっぷりと水を含んだ地面から、もあっとした蒸気がたちのぼり、世界がなんだか重たい。それでも晴れは晴れであって、仕事しつつも、どこかへ行きたくなった。
 仕事を終えて自宅へ帰ると、なにやら大きな箱が届いていた。差出人は、ニック・ステファノス。不吉な予感がし、開けてみると、佐藤多佳子『一瞬の風になれ』全3巻(講談社)が入っていた。やっぱり。おそるべし、ニック・ステファノス。私に仕事をさせないつもりらしい。しかし私は読まないぞ。それより『夏から夏へ』(集英社)の続編を希望だ。あと4継メンバーのNHKスペシャルも希望だ。
 
 本日0時の早明浦ダムの利水貯水量5.2%。

8月28日(木)

 新聞連載のサブカルに関するコラム。万華鏡について書く。
 これまで、万華鏡なんて少女趣味で、ちっとも面白くないと思っていたが、先日福岡のワークショップで出会った万華鏡には感動した。その万華鏡は従来のものとは全然ちがって、鏡の箱なのである。つまり鏡を向かい合わせに六面貼りあわせて立方体にした、天井と壁と床が全部鏡でできた部屋みたいなもの。そこに、小さな窓を開けてセロハンなどで色をつけると、その窓の模様が無限に反射されて、それはそれは美しいのだ。簡単に作れるので、子供の夏休みの工作に最適だが、子供じゃなくても十分面白い。こないだ妻子が帰省している間に、ひとりで黙々と作ってしまった。もし誰かが見ていたら、ひとり暮らしのおっさんが、夜中に黙々と万華鏡を作る姿は、さぞかし不気味であったろう。
 昔からよくこういうことを考える。
 光の速度にも限界があるのなら、鏡の部屋のなかに一条の光を射し、その部屋をぴったり閉じると、光が閉じ込められるのではないか。光が無限に乱反射している間に、出口を塞いでしまうのだ。もしそうなれば、閉じ込められた光が、いつまでも無限の鏡に反射して、部屋の中を明るく照らすだろう。部屋の中は、光源もないのに、明るいのである。そういうことが起こり得るのか得ないのか。

8月29日(金)

『完本 八犬伝の世界 (ちくま学芸文庫)』
高田 衛
筑摩書房
1,575円(税込)
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 昨日から今朝にかけて、東京は豪雨になり、土砂崩れで電車が脱線したりして、それはそれでちょっと面白い。息子が、土砂崩れ見に行きたい、というので、そういう子供が氾濫した川に流されて死んだりするのだ、と諌めたけれど、本当は自分も行きたい。
 しかし、日本各地でこれだけ雨が降って被害も出ているのに、四国の早明浦ダムは渇水である。 
 本日0時の早明浦ダムの利水貯水量2.6%。 
 日毎にみるみる減っている。まるで自分の貯金を見るようだ。
 高田衛『完本 八犬伝の世界』(ちくま学芸文庫)を読む。かつて中公新書版を読んでいたが、内容が増えていて、読み応えがあった。

8月30日(土)

 雨。
 もうなんだか、ここんとこずっと雨だ。
 しかし私は、出かける用事さえなければ雨も結構好きで、強い雨が降ると、窓辺へ行って、じっと眺めていたりする。家にウッドデッキみたいなものがあれば(屋根付き)、外に出て、デッキに寝転んで身近に雨を感じていたい。外出好きの私ではあるけれど、雨ならあきらめもつくし、雨にはどこか異国情緒のようなものを感じる。かつて東南アジアをぶらぶらと旅していたとき、よく突然の雨に見舞われ停滞を余儀なくされたが、足止めをくっていまいましく思う反面、開き直ってしまえば、かえって心安らぐときもあって、ゲストハウスのデッキや廊下で、意味もなく雨を眺めたものだった。雨のしぶきや、それに伴う風を浴びていると、ああ、自分はここにいるという実感が強く意識されて、それが充実なのだった。今思うと、東南アジアでの雨やどりは至福の時間だった。ただし小雨はつまらない。雨はザーザー垂直に降るのがいい。
 ペーパードライバーの妻が二十年ぶりに車を運転したいというので、練習に付き合う。子供を置いていくわけにはいかないので、家族みんなで妻の運転する車に乗って、一家心中するような気持ちで車線変更。
 
 本日0時の早明浦ダムの利水貯水量0.6%。 
 もうないじゃん。

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