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WEB本の雑誌【本のはなし】バーチャル書店 > 『期間限定!辻村深月書店』

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もしあの人が本屋の店長だったら、何の本を置くのだろう??
バーチャル書店 第2弾は『辻村深月』さんだぁ!
店長写真

1980年生まれ。千葉大学教育学部卒業。
2004年に『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。
4作目となる『ぼくのメジャースプーン』が、講談社ノベルスより絶賛発売中。
他の著作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』がある。
店長NEWS
辻村深月さんの最新刊
ぼくのメジャースプーン
『ぼくのメジャースプーン』
【講談社ノベルス】
1,019円(税込)

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更新日 : 2006年5月17日
本棚セレクトテーマ 『 今の私を支えてくれている大好きなものたち 』

    リリィ・シュシュのすべて 少女革命ウテナ
    リアル・ワールド 十角館の殺人 真・女神転生V NOCTURNE PlatStation 2 the Best
藤子・F・不二雄SF短編集 ハル 蒲生邸事件 悪童日記 ヘルタースケルター 本

『リリィ・シュシュのすべて(通常版)』 岩井俊二 監督/ \4,935 (税込)
リリィ・シュシュのすべて

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今回選んだ作品には青春モノという流れがあるんですが、その中でも一番、「青春」という名のあの時期がリアルに描かれている作品だと思います。すごく痛くて切なくて残酷。リンチに近いイジメを受けている主人公の男の子。草原のような田んぼの真ん中でリリィ・シュシュというミュージシャンの音楽を聴いている時だけ、生きている感覚をとり戻せるということが、言葉では一切説明していないけれど、画面から伝わってきます。映像や音楽がきれいであればあるほど、現実とリリィ・シュシュを聴いている時間の距離が開いていき、切なくなる。青春というのはどうしようもなく救いがないもの。その中で、救いを音楽や文章に求めている子たちに光を与えてくれている点でも、この作品は素晴らしいと思います。今、そういう時期にいる人たちも絶対に抜け出せる時がくる。抜け出した後でもう一度この作品を見返してほしい。自分の中にも、自分にとってのリリィ・シュシュがいたと気づくはずだから。
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『少女革命ウテナ』 キングレコード/ \6,279 (税込)
少女革命ウテナ

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『美少女戦士セーラームーン』のディレクターを務めた幾原邦彦さんが監督したアニメです。『新世紀エヴァンゲリオン』が流行った時期で、アニメで人間の内面をより深く描くようになった頃のもの。最初はあまり期待していなかったんですが、途中からはこれを見るために学校から全速力で走って帰るほどに(笑)。舞台は中学校。ここにはゲームのシステムがあるんです。放課後、生徒たちが決闘にエントリーして、勝った者が「薔薇の花嫁」と呼ばれる少女を次の決闘までの間連れて歩くことができる。主人公の転校生、ボーイッシュな女の子のウテナは、そのシステムはおかしい、自分が王子にならないとダメだ、と言い、「薔薇の花嫁」を付き従わせるのでなく友達になろうとする…。映像は宝塚風味で耽美。J.A.シーザーによる音楽も気持ちいい。一番のテーマは、女性が強く生きていくことはどういうことか、といった、ジェンダーの問題だと思うんですが、モラトリアムの苦しみも描かれていて、登場人物たちは、自分の居場所を見つけたい人たちばかり。自分には何もないと、あがく姿がすごく息苦しく感じられるアニメですね。そして最後にどんでん返しがあるんです。その、ゲームと現実が融合する瞬間は、今思い出しても身震いしてしまいます。
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『リアル・ワールド』 桐野夏生/集英社文庫/ \500 (税込)
リアル・ワールド

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人間を描くのと感情を描くのは少し違うと思う。そして桐野さんは、感情を描き出す天才だと思います。事件の真相や犯人の心の闇を描く作家さんは多いけれど、桐野さんだけは、閉塞感だったり絶望感だったりと、感情を描くことに向けて出発している。この作品は女子高校生4人が主人公。母親を殺した少年が逃亡する際、仲良しグループの4人の女子高校生たちとそれぞれ関わっていく。それぞれの視点で描かれるなか、浮かび上がるのは「他の人にこう見られている自分」と「自分がこうだと思っている自分」の乖離感。痛々しいのは"本当は自分はこうだけど、みんなはこう思っている"という思い込みが、別の子の視点になると"あの子が秘密を抱えているのは周知の事実だ"と、あっさり覆されること。相談すべきことは口にせず、それでも友達という名前で結びついていくことは、この時期の子たちにとって正しいことだと思う。そのやるせなさが身に染みる。最後に生き残る者とそうでない者が出てくるんですが、あと2、3年我慢すればどうにかなるのに我慢できなかったという、刹那的な青春の残酷さも、描ききった作品だと思います。
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『十角館の殺人』 綾辻行人/講談社文庫/ \620 (税込)
十角館の殺人

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店長直筆POPはこちら♪
私にとってのリリィ・シュシュが、綾辻行人先生です。音楽や小説で人を救えるか、という時、作品の中で希望や愛が提示されていようが、それは関係ない。ただその世界に夢中にさせることでしか、人間は救えないと思う。例えば明日自殺しようと思っても「来月綾辻先生の新刊が出るかもしれない」と思ったら思いとどまる。そんな風に思えるかどうかだと思うんです。中学生の時、綾辻先生の本を読んだ時、世の中にこんなものがあるのかと思いました。これは最初に読んだ作品なんですが、その衝撃はすごかった。読書をしていて、立ち上がって叫びたくなる本って、あまりないですよね。推理小説なのに人に真相を喋りたくなってしまったほど。何回も読み返しました。これだけ完全な館という装置を作ってもらったら、脳味噌が揺さぶられてしまいます。それに文章が繊細なんですよね。この作品からミステリーにハマる人は多いと思う。綾辻先生って、本格ミステリーというジャンルのプロモーター。これから綾辻先生を知ることができるなんて、未読の方が羨ましい。嫉妬すら覚えてしまいます(笑)。
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『真・女神転生V NOCTURNE PlatStation 2 the Best』 潟Aトラス/ \2,800 (税込)
真・女神転生V NOCTURNE PlatStation 2 the Best

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ゲームは昔からやっているのですが、大学の頃、ふと、やる意味があるのかな?と思って。何十時間と費やすのにストーリーは決まっていて、完全に与えられるばかりで自分で考える余地がない。それは空しいな、と。でもこのゲームは違う。いろんな世界観や欲望、理念が出てくるし、ユーザーに求められている割合がすごく大きいんです。もう変えられない「運命」が予め用意された上で、その中をどう判断して生きていくかが求められる、そんな哲学のあるゲーム。小学校の頃に『真・女神転生』をやって衝撃だったのは、LAWとCHAOSが選べるようになっていたこと。LAWは道徳感にあふれ、CHAOSは生き残るためには人を殺すことも辞さない状態。この、絶対的なものなんてないという思想に出会っていなかったら、今私が書いているものも変わっていたと思います。『真・女神転生V』は、他にないくらいよくできていて、戦闘バランスもシビア。こんなにレベル高いのに、こんなことで死ぬのか! ということもしばしば。ダンジョンも難解。でも、ならばそれにお応えしましょう、と、ゲームをやる意義をすごく感じます。ちなみに外伝の『ペルソナ』は高校生何人かが主人公のRPGになっています。私は学園ものも書きますが、これの影響は大きいですね。この夏には、こちらも新作の「3」が出るので、今からとても楽しみです。 店長写真
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『藤子・F・不二雄SF短編集』 藤子・F・不二雄/小学館 全8巻
藤子・F・不二雄SF短編集

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藤子先生は大好き。私は『凍りのくじら』という小説で、藤子先生へのオマージュを思い切り書かせていただきました。藤子先生というとドラえもんのイメージが強いと思いますが、このSF短編集はすごくブラック。例えば「ミノタウルスの皿」という短編は、宇宙船が故障して不時着してみたら、そこは牛の姿をした動物が人の扱いを受け、人間はウスと呼ばれ家畜扱いをされる星だったという内容。助けてくれた人間の女の子を好きになるのだけれど、彼女は大祭の日に食べられることを名誉に思っていて、逃げようと言っても聞き入れない。「カンビュセスの籤」は、助けを待つ二人が、食料もつきてしまい、籤を引いて勝ったほうが生き残り、負けたほうが命をつなぐため食料になることにする…というお話。どれも短いのにすごく完成度が高くて、読む前と後では考え方が変わってしまう。やるせなさ、切なさと、ホラーの怖さが心にすっと入ってくる。こんなに人間を壮大な目線で割り切って考えたりもしていた人が、それを踏まえた上で、『ドラえもん』のような人間の善を信じた作品も書いたんだと思うと改めてその凄さに息を呑みます。SFの苦手な方でもきっと楽しめる、"少し・不思議(S・F)"な作品集です。
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『ハル』 瀬名秀明/文春文庫/ \620 (税込)
ハル

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近い将来実際にありそうな、ロボットを巡る5つの物語。私が今まで読んできた、ロボットをすでにあるものとして扱う小説とは違って、これからロボットを作っていく時に何ができるのかという問題を、文系人間の私にも分かるように書いている。登場人物は、日用品として扱ったり、ペットと見なしたり、おもちゃにしたりと、それぞれのやり方でロボットと接している。友達扱いするほど距離感が近すぎることはないのだけれど、みんなきちんとロボットを、自分たちの暮らしの中の現実としてとらえている。そして、わりきった考え方をする人も、慈しんでいる人も、共通しているのはロボットに対する情熱。自分の立っている今、というものが、昔から見た未来なんだと実感すると同時に、ここから先の未来を作るのに、ロボットに対する無力さと、祈りにも似た切ない希望を感じます。今この瞬間にも、実際に未来を作るために願いと情熱を燃やし続けている人がいるのかと再認識し、感動します。現実と地続きの小説として、読み終えた後に自分自身の小ささを痛感すると同時に、明日への願いと希望を感じて、すがすがしい気持ちになれました。
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『蒲生邸事件』 宮部みゆき/文春文庫/ \900 (税込)
蒲生邸事件

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宮部みゆきさんは大好きで、ベスト1を選ぶならこれか『スナーク狩り』。これは受験のために上京した主人公が2月26日にホテルの火災に見舞われ、時間旅行の能力を持つ男の人に助けられ、気づくと昭和11年、二・二六事件直前の帝都東京にいた…という話。今から何が起きるか知っている状態の中での感情の動きがすごくリアル。二・二六事件のような歴史を動かす出来事とは別に、さまざまな事件も起きるのですが、主人公はあくまでもその世界に生きる人たちと同じ目線で物事を見ようとする。上から見るのでなく、下から見上げるように書かれている、その語り口が本当に素晴らしい。そして、後に間違っていたとされる歴史の中にいる切なさが、ラストに襲いかかってきます。感じたのは、その時代に起きたことに対して、後から間違っていた、と批判するのは必ずしも正しいことではない、ということ。歴史という大きな枠組みの中にこんな目線を置いて、丁寧に書くことは本当にすごいと思いました。ラスト近くに散歩のシーンがあるのですが、今まで読んできた小説の中でベスト5に入るくらい感情が揺さぶられました。吐く息が白くて、足の先が冷たくて…その感覚が、焼き付いて離れません。
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『悪童日記』 アゴタ・クリストフ/ハヤカワepi文庫/ \651 (税込)
悪童日記

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第二次世界大戦下のハンガリーについて書かれているんですが、具体的な地名や人名は一切出ません。戦争を生き抜いていく、"ぼくら"と名乗る双子の少年の日記です。もう、何回読み返したから分かりません。あらゆる恐怖を克服するために、鍛錬を積む"ぼくら"。温度を感じなくなるように裸で過ごしたり、痛みを感じなくなるほどお互いをむち打ったり。悲しみや喜びという感情を感じさせず、淡々と書かれていく。戦争の残酷さには触れずに、そこにある現実を書いているだけ、なのに読んでいると登場人物が人間くさく感じられる。寓話的なんですか、その中にちらちらとリアルがちらつくんですよね。それが生々しくて鳥肌が立つ。無声白黒映画を観ているのに、色がふっとついては消えていく感じ。こんな表現の方法があるのかと驚きました。寓話的な体裁ですが、戦争を生き抜いていく"ぼくら"には一切余裕がないのだと思う。今テレビやメディアの中で目にする現実は、どうしようもなくヒマで裕福で、人間はだからきっと、イジメとか、余計なことをしてしまうところが、きっとあるんだと思うんです。余計なことを削り落とすと、人間はこんなにストイックになり、同じ場所を起点にした残酷さと純粋さが残り、それと向き合えるようになるのかもしれない。高校生くらいの年代の人に読んでほしいですね。
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『ヘルタースケルター』 岡崎京子/祥伝社/ \1,680 (税込)
ヘルタースケルター

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店長直筆POPはこちら♪
岡崎京子さんの描く世界は激しい。この作品の帯にはこうあります。「いつも一人の女の子のことを書こうと思っている。いつも。たった一人の。一人ぼっちの。一人の女の子の落ちかたというものを。」強くて孤独でいろんな意味をこめて美しいトップモデル、りりこ。全身整形をして原型も残っていなかった彼女ですが、次第に整形の影響で顔も崩れ、身体には痣が広がっていく。限界を迎えていく中で、身体と、そして心が壊れていくその音がどのページからも壮絶に鳴り響いている。とにかく闇が深いんです。自分を押し上げてきてくれた社長に「私の収支決算は赤字?黒字?」と聞き、社長が「あんたを作り上げたのは私だから最後まで責任とります」と言うと、モノローグで"だけど社長、最後ってなによ"って…。この物語に終わりはないんですよね。りりこは、美と幸せにすごく執着しているのに、かといって誰からも愛されることを必要としていない。自分が消費される商品であることを痛々しいくらいに自覚している。でも岡崎さんが書きたかったのは美に執着する女の業ではなくて、あくまでもりりこという女の子の生き方そのものであり、彼女への愛情。だからこんなに響くんだろうな、と思います。自分自身を食べ尽くす程、焼き尽くす程の勢いで生きるりりこを、一人でも多くの人に見届けて欲しいと思います。
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取材:2006年4月16日 文責:瀧井朝世 写真:滝口勇也

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