| 『小さき者へ』
重松清/660円(税込)/新潮社文庫 |
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「必ずまた読みたくなる本」と考えると、どうしても重松清さんの本が多くなってしまいます。
この短編集には、痛みや苦しさを抱える人達が描かれています。どんなに弱く、もろく、悲しみを抱えていても、人の後ろには必ず応援してくれる人がいる、と確信させられます。
最初に読んだとき、「団旗はためく下に」という話に出てくるお父さんが好きで、一番印象に残りました。主人公は高校生の女の子ですが、彼女の父親の方が存在感が大きいのです。かつて大学で応援団長だった父親は、娘が高校を中退する日、かつての応援団仲間を集めて、校門のところで娘にエールを切ります。
その後、何度もこの本を読むうちに、「小さき者へ」の章が一番好きになりました。
息子は家に引きこもり、家庭内暴力もある。父親は口では何も言えないけれど、パソコンで息子に手紙を書き続ける。息子に手渡すことなく、溜まる一方の手紙の中で、父親は、自分と自分の父親(つまり息子から見れば「おじいちゃん」)のことも息子に伝えようとする。
この父親の話が胸に迫ります。
注:新潮文庫版の解説を華恵さんが書かれています。 |
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| 『流星ワゴン』 重松清/
730円(税込)/講談社文庫 |
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「重松清さんの本が好きなんです」と周りに言うと、返ってくる答えの多くが「『流星ワゴン』なんか特にいいよねぇ」なんです。それで、私も読んでみたのですが、他の重松作品とは少し違った内容で、驚きました。
「過去の時間に戻ってやり直す」という非現実的な内容なのですが、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」とは違います。過去の人生のやり直し地点に戻って違うことをやっても、現在は変わらない。「やり直しができない」ということを現実として受け止めて、これからをやり直す……。
物語の結末は、意外でした。何かドラマチィックな終わり方になるのでは、と思っていましたが、とても現実的で、驚きました。
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| 『その日のまえに』 重松清/1,500円(税込)/文藝春秋 |
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この本は、発売されてすぐに読みました。
最初に読み終えた後は、静かな感動を覚えました。
そして、二度目に読んだときは、ひとつひとつの言葉が重く、泣きながら読みました。でも、不思議に「悲しみ」とは少し違います。大切な人を亡くしてしまう悲しさは確かにあるのですが、喪失感よりも、去っていく者の気遣いや、残された者の前向きな姿に泣かされます。
それから、「忘れる」ということの意味も考えさせられました。
死をテーマにした短編集ですが、「生」が根源にある本です。
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| 『はせがわくんきらいや』
長谷川集平/1,680円(税込)/ブッキング |
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小学校二年生のとき、図書館で見つけました。表紙がとても衝撃的だったので、さっそく手に取って読みました。今回、唯一取り上げた絵本ですが、自分の中では「絵本」というカテゴリーには入れられない、特別なジャンルです。
「はせがわくん」は森永ヒ素ミルク事件で体に障害が残っている男の子です。障害者が抱える大変さ、というよりも、友達の目から対等に見た「はせがわくん」を描いています。友達は「はせがわくんきらいや」と言いながら、いつも助けてしまう。野球を一緒にやったり、長谷川くんが鉄棒から落ちたら飛んで行って助けてあげたり。負ぶってあげたり。ときには殴ったりもして。最後まで「だいきらい」と言いながらも、友達は手を貸すのです。
胸をドンドン叩かれるような衝撃的・感動的な本です。
本物の関西弁で読めたら最高です。
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| 『Presents』 角田光代 松尾たいこ/1,470円(税込)/双葉社 |
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とても温かく穏やかな短編小説集です。
私が一番好きなのは、「鍋セット」という物語。大学生になった女の子が東京で一人暮らしをすることになり、引越しの日、お母さんが鍋を買っておいていく。その鍋を主人公はずっと大切に使い続けて、大学を卒業して料理研究家になる。そして、キッチンにはもう何十年も使いこんでボロボロになった鍋がある。
それぞれの章に大切な「プレゼント」が描かれています。
そして、それは、角田さんから読者への贈り物でもある、ということに読んだ後で気付かされます。
モノを通して誰かと繋がっている、ということ。大切な人に大切なものをプレゼントする、という意味を、ひとつひとつの話の中でじっくりと味わうことができます。
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| 『非色』 有吉佐和子/651円(税込)/角川書店 |

ISBN:404126202X
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終戦後、ニューヨークのハーレムで生きていく日本人女性の話です。
黒人の男性と結婚してアメリカに移り住み、人種差別を目の当たりにし、また、自分自身も差別を受けながら逞しく生きていく姿がリアルに描かれています。
私が知っている地名が出てきたり、私がお世話になった韓国人のおばさんと主人公がそっくりなので、ドキドキしながら読みました。観光で映されるニューヨークの表面的なイメージとは全く違い、きれいごとのない現実がよくわかります。
もう60年近く前の話なのに、時間の隔たりを感じさせず、今の話かと思いました。
ラストシーンでは、静かな力が沸いてきます。
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| 『バッテリー』 あさの
あつこ/540円(税込)/角川書店 |
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最初に読んだのは、小学6年生の時です。図書館から借りて、「おもしろい!」と夢中になって読み、その翌年、本屋さんにシリーズで並んでいるのを見つけて、文庫本をまとめ買いしました。ちょうど高校野球の夏の甲子園大会をやっていた頃で、高校野球を観るのが大好きな私は、昼はテレビの中継を見て、夜はこの本を読む、という毎日でした。
高校野球はチーム全体が主役だけれど、この本の主人公はピッチャーとキャッチャーの二人。天才的で、自信家で自己中心的な、ピッチャーの巧。友達にはあまりなりたくないタイプです。でも、物語の中で試合が始まると、やっぱりこの二人を応援したくなります。
『バッテリー』は、一度読み始めると止まらなくなる本、元気になる本、絶対に夏に読みたくなる本、です。
自分には決して入れない世界だから、夢中になってしまうのかもしれません。私の周りで、この本に夢中になっているのは女の子が圧倒的に多いのです。
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| 『カナリア』 塩田明彦
(監督)/3,990円(参考価格・税込)/バンダイビジュアル |
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「ニルヴァーナ」というカルト宗教団体が事件を起こし、母親に連れられて施設に入っていた兄(光一)と妹(朝子)は児童相談所に送られる。その後、祖父は妹だけを引き取り、兄が児童相談所を抜け出して、妹を取り返しに行く。途中で由希という女の子と出会い、一緒に東京を目指す。東京に着いて、光一は自分の母親の指名手配チラシを電柱で見る。食事をしに立ち寄った店のテレビで、母親が亡くなったことが報道される。光一は外に飛び出して、どしゃぶりの雨の中、体を曲げて泣き叫ぶ……。
そこからラストまで一気に物語は進みます。光一は祖父から朝子を取り返し、歩きながら流れる「銀色の道」という歌がそのシーンにピッタリなんです。
ラストシーンで、光一と朝子と由希が歩いていくラストシーン。つないだ手のアップが写って……最後の場面で、「ああ!」と思わず声が出ます。そして、意外なことに、そこで急にラップ調の歌が入ります。「自問自答」という歌。ビートにのったラップではなく、もっとグチャグチャで言葉のみを発するラップ。意外な組み合わせですが、不思議とこのシーンにぴったりなのです。
「銀色の道」を歩き続ける。悲しみと辛さと怒りとを抱えながら、歩き続ける。今を生き続ける。
見終わった後、しばらく動けなくなりました。すごい衝撃でした。
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| 『バーバー吉野
(スペシャル・エディション)』 荻上直子
(監督)/4,935円(参考価格・税込)/ハピネット・ピクチャーズ |
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田舎の村の「バーバー吉野」という床屋さんが主人公です。
その地域の男の子たちは皆、前髪をパッツンと切る「吉野刈り」と呼ばれるマッシュルームカット。昔からの慣わしで、見事にみんな同じ髪型をしている。村の掟のようになっていて、誰も髪型に疑問もつことはなかった。床屋のおばちゃんは、いつも口うるさいし地域や学校からの信頼も篤い。村のどの子もジタバタ騒ぐこともない。でも、ある日、都会的な転校生が来て、「吉野刈り」に反発する。そして、周りの男の子達も「吉野刈り」に立ち向かう決心をする。
ちょっと頑固で妥協しないけど、温かい人。こういうおばちゃん、私は好きです。
父親の存在感はあまりないのですが、息子が河原で父親と「あずさ2号」をハモるシーンは素敵な絵になっていました。
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| 『ワンダフルライフ』 是枝裕和
(監督)/3,990円(参考価格・税込)/バンダイビジュアル |
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舞台は、亡くなった人が天国に行く前にやってくる古い建物です。
「あなたは昨日、お亡くなりになりました。ご愁傷様でした。あなたの一番大切な思い出をひとつ選んでください」とそこの職員に言われ、自分の人生を語りながら大切な思い出をひとつだけ決める。そして、職員がその思い出を映像化し、「死者」は、最終日にその映像を観て「あちらの世界」に旅立つ。
中には選びたくないという人がいたり、人生にいい想い出なんかないという人がいたり、ぼけてしまった人がいたりと、いろいろな人が出てきます。
役者さんだけでなく、一般の人が同じように自分の人生を語ります。「フツウ」であればあるほど現実的で、もっと聞きたい、と思わせられます。年を取った人たちが選ぶ思い出は特に印象的です。スケベ老人が選んだ一番の思い出。老婦人が静かに歌う「赤い靴」……。人それぞれの幸せがある、ということがよくわかります。
映画全体の雰囲気は、ドラマチックな音楽もなく、淡々としています。
古い建物。どんよりと曇った冬空。でも、じんわりとした温かい空気が伝わってきます。
怖いとか宗教じみた感じはなく、ドキュメンタリーのようでもあり、今、自分がいる世界のことを考えさせられました。
本当は是枝監督の「誰も知らない」をご紹介しようと思ったんですけれど、この映画も是枝監督の作品なので、この映画を紹介しました。
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