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WEB本の雑誌【本のはなし】バーチャル書店 > 『期間限定!梁石日書店』

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期間限定!梁石日書店
もしあの人が本屋の店長だったら、何の本を置くのだろう?バーチャル書店第6弾は『梁石日』さんだぁ!
店長写真 梁石日( ヤン・ソギル )

一九三六年大阪市生まれ。事業を興すが莫大な借金を抱え倒産。二十九歳で大阪を出奔、放浪。のちに東京でタクシー運転手を十年勤める。 デビュー作『タクシー狂躁曲』は「月はどっちに出ている」として映画化。山本周五郎賞受賞『血と骨』はミリオンセラーとなり映画化された。著書に『夜の河を渡れ』、『夜を賭けて』(映画化)、『魂の流れゆく果て』、『海に沈む太陽』、『カオス』、『未来への記憶』など多数。

店長直筆POP♪

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店長NEWS 梁石日さん話題の書
『ニューヨーク地下共和国』
『ニューヨーク地下共和国』
(上・下)
【講談社】
各1,890円(税込)

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『シネマ・シネマ・シネマ』
『シネマ・シネマ・シネマ』
【光文社】
1,785円(税込)

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本棚セレクトテーマ 『面白かった本・面白かった映画』更新日 : 2006年12月14日
嘔吐 吾輩は猫である 阿Q正伝・狂人日記他十二篇 鴉の死・夢、草深し
南回帰線 地下生活者の手記 灰とダイヤモンド 第三の男 プラトーン
『嘔吐』  J‐P・サルトル/2,310円(税込)/人文書院
嘔吐

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初めて読んだのは、1950年代、マルクス主義が全盛期だった高校3年生の頃ですね。

僕は上宮中学というお坊ちゃん学校から、府立の高津高校の定時制に進んだんですが、始業式に学校に行くと、屋上からは「内灘村米軍基地反対」というビラが撒かれ、講堂では生徒が檄を飛ばしている。あれはすごくショックを受けました。俺の人生、今まで何をしていたんだろう、と。
1週間後に先輩に誘われ基地反対闘争に3泊4日で行ったら、帰ってきた時にはすっかりマルキストになっていました(笑)。そしてマルクスばかり読んでいる時に、サルトルの本と出会ったんです。マルクス主義の人間学的な欠如を補うという意味で、実存主義が流行したんですよね。とりわけ『嘔吐』は、実存的人間の内面を描いているということで、当時の若者や文学に大きな影響を与えました。
それからまもなく詩人の金時鐘が主宰する「ヂンダレ」というサークル誌に詩を書きはじめました。金時鐘と一緒に、総連、つまりは金日成を批判して周囲に頭がおかしくなったんじゃないかと思われた。でも、それから50年近くたった今、僕らの主張が正しかったと証明されている。それは僕らが、マルクス主義や実存主義をきちんと学んで主張していたからだと思います。


『吾輩は猫である』 夏目 漱石/ 588円(税込)/岩波文庫
吾輩は猫である

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夏目漱石は全集ですべて読みました。全集がブームだった時期があったので、揃えては喜んでいたんです(笑)。
これは高校時代に読みましたが、漱石の小説の中ではもっとも好きな作品。日本の近代文学に新しい小説をもたらしたと思う。
これは、猫の目から人間を見ることによって、近代というものに対するそれまでの見方、視点をすごく変えてみせた。また、漱石は落語が好きで、そういうものがうまく取り入れられている。ユーモラスだし、かつ当時の知識人の高い水準がよく現れていますね。

『狂人日記  (阿Q正伝・狂人日記他十二篇) 魯迅/ 588円(税込)/岩波文庫
吾輩は猫である

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20歳くらいの頃に読んだ作品。
魯迅はあまり作品の多い作家ではありませんが、これも学研の全集を一括で注文して揃えました。今でも大切に取ってあります。
魯迅の代表作には「阿Q正伝」がありますが、やっぱり処女作の「狂人日記」が好きです。彼が仙台の医学専門学校に留学していた頃に日露戦争で中国がどんどん退廃するのを見て、自分は社会の医者になる、と言って文学を志す。そして発表されたのがこの短編です。
主人公は親、兄弟、親戚、近所の人々に対して、みんなも自分も人間の肉を喰ってきたと言って周囲から狂人扱いされる。この小説は、近代中国のみならず、世界の近代における非人間的な行為を痛烈に批判することで、人間存在の真実を暴いたといえますね。
漱石は大好きだけれど、魯迅と10数年しか年齢が違わないと考えると、魯迅のほうがはるかに世界を視野に入れていると感じますね。漱石、つまり日本側はいかに無自覚でいたかが分かる。そのことは、その後いろいろな形で現れている。近代的自我をいかに克服していくかという問題を、日本はいまだにクリアしていない。
そういう意味でも「狂人日記」は、現代の日本でも非常に有意義な小説だと思います。

『鴉の死・夢、草深し 金 石範/ 630円(税込)/小学館文庫
鴉の死・夢、草深し

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「鴉の死」は、1948年4月に勃発した済洲島蜂起を題材にした小説。
7万人の島民が虐殺されたといわれる事件で、南北に分断された朝鮮の戦後史の闇の世界を描いています。金さんは「鴉の死」を原点として済洲島四・三事件をずっと書き続け、後に『火山島』という実に1万1000枚に及ぶ大長編小説を書いています。20年に渡った連載だから、すごい執念で書かれたものですよね。これは本当に意味のある小説なんです。
というのも、済洲島四・三事件は事件後、タブーとなってしまったからです。闇の中に葬られて、なかったことにされてしまった。でも大阪には済洲島から逃げてきた人がかなりいて、日本では口を開くことができた。それがよかった。だから金さんも書き続けることができた。
03年にはじめて四・三事件に光りが当てられ、韓国大統領が済洲島に来て謝罪しました。それも、大阪でホルモン焼き屋をやりながら、ずっと書き続けてきた金さんの力も大きかったと思います。文学の力って大したものだと思います。
僕は金さんのことを知っていますが、今年81歳で、すごく元気。大統領の謝罪を聞いて「いやあ、長生きはするものだ」と言っていました(笑)。

『南回帰線 ヘンリー・ミラー/ 1,785円(税込)/講談社文芸文庫
南回帰線

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22歳で僕は詩を書くのをやめました。組織と対立して「ヂンダレ」が廃刊になり、3人だけで出した「カリオン」も3号で終わった。詩を発表する場を失い、その後25歳で結婚し、26歳で起業して29歳で倒産する。10億くらい借金があったんですよ。詩とか文学とか言っていられない生活が続き、31歳で仙台に都落ち。そこでも居づらくなって、明日町を出ようか、明後日出ようか…と考えて町を歩き、ふらっと入った本屋で、なぜか目に入ったのが『南回帰線』でした。
大阪で詩を書いていた頃、ヘンリー・ミラーのことはよく聞いていたんです。ものすごく猥褻な作家で、翻訳できないと言われていて。猥褻なのに“世界文学”と謳われているとは、一体何を書いているのかな、と手に取って読んで、2ページで大衝撃を受けました。

猥褻作家どころか、偉大な作家じゃないか! と。

実際買って読んで、最高の作家だと思った。
俺が探し求めていたのはこれだと分かりました。
アメリカ文学の異端児ヘンリー・ミラーは、のちにヒッピーの元祖といわれ、ヴェトナム戦争の反戦運動に大きな影響を与えた作家。
僕が感じたのは、その徹底性。アメリカ文化を徹底的に批判しているんです。その批判は、今の日本はそっくり当てはまる。
日本人は、ヘンリー・ミラー作品のような小説は100年経っても200年経っても書けないと思う。精神構造が違いますから。アジア人では無理かもしれません。


『地下生活者の手記』 ドストエフスキー/4,515円(税込)/ゆまに書房
地下生活者の手記

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※梁石日先生がお持ちの版とは異なります。
監獄にいる囚人たちの、地獄のような生活を描いた、ドストエフスキーの最高傑作だと思います。彼の作品の中では、日本の戦後文学に与えた影響は一番大きいんじゃないかな。戦後の詩はまずフランス文学に影響を受けているけれど、その次がロシア文学ですから。
逮捕され、杭に縛られて銃殺刑直前までいったところでなぜか中止になって一命ととりとめるものの、その経験がトラウマになる主人公。釈放はされず、監獄の様子が描かれるのですが、この描写がすさまじい。足には鎖がつながれたままで生活する。風呂も月一度しか入れず、しかも大勢が入るから風呂水は泥水になってしまう。そんな極限状態が描かれていていく、強烈な小説です。
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『灰とダイヤモンド 出演: ズビグニエフ・チブルスキー 監督: アンジェイ・ワイダ
灰とダイヤモンド
これもショックでしたね。20歳くらいで観ました。
これはポーランド映画。1945年、ドイツ軍に占領され、権力闘争が繰り広げられるポーランドで、左翼陣営の内部から、何も知らない、ニヒリストの若い青年が暗殺の指令を受ける。その末路、その悲劇がおぞましい。

映画というのは、映像美が大切。そしてこの映画の映像が、すごくいいんです。
爆撃され廃墟となった教会の中で逆さまにぶらさがっているキリスト像。その前に若者が立って、神もくそもあるものか、と言う若者。
暗殺指令を受けた彼が、至近距離から相手を撃つ。衝撃で二、三歩前に出た相手を受け止める姿。そして水たまりに映る花火…。
青年が最後に撃たれるのはゴミ捨て場。ものすごいゴミの山です。その中で、あがきながら死んでいく。その最期の姿は、本当にショッキングでしたね。


『第三の男 出演: オーソン・ウェルズ, アリダ・ヴァリ 監督: キャロル・リード
第三の男

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観たのは中学生くらいの時かな。
これも映像が非常にいい。
かつ、ミステリー映画の原点だと思う。
売れない作家が親友を訪ねてパリに来るが、親友は交通事故で亡くなっている。主人公は親友の恋人を訪ね、話を聞いているうちに交通事故死に疑問を抱き、親友は生きているのではないかと思いはじめる…。
恋人役のアリダ・ヴァリと、親友役のオーソン・ウェルズが本当にいい。
オーソン・ウェルズは映画史上最高の悪役ですね。
恋人が、猫が彼になついていた、と言う。主人公が暗い道を歩いていると、その猫が道を横切っていく。行った先を見ると、暗い道の脇に、靴の先が見える。近所の住人が部屋の明かりをつけた時、彼の顔が浮かび上がる。……その時の彼のニタッとした笑いが忘れられません。
その時最高潮となるギターの音色もなんとも言えない。
素晴らしい映画です。

『プラトーン 出演: ロバート・リチャードソン 監督: オリバー・ストーン
プラトーン

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ヴェトナム戦争映画は沢山ありますが、アメリカ側から描く、勧善懲悪なものが多かった。どこか西部劇的なところもあって。でも、この作品でヴェトナム戦争の見方が変わったんじゃないかな。
前線の緊迫した場面と、兵士たちの恐怖におののく姿は、戦争のむなしさをよく描いている。ヴェトナム戦争をテーマにした映画の中でも秀作だと思います。


取材:2006年11月16日 文:瀧井朝世
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